「そうだよ! だから、お話聞かせて……?」
 なのはが”お話聞かせて?”って言う。
 こう言っている時のなのはは本当にお話をするまで逃がしてくれない。

 逃げ道を塞がれちゃったかな……?

 私のことをじっと見ているなのはを後目に私はそう思う。
 
 悠翔との出会い……
 え〜っと……

 とりあえず私は悠翔との出会いを思いだしてみる。

 怖い男の人に絡まれてるのを助けて貰って……
 私はその時に悠翔に抱きついて……?
 それから……翠屋に案内している途中で転びそうになった私を助けてくれて……
 それで、その時に悠翔に胸を触られて……?
 あれ……ど、どうしよう……?
 こうやって考えてみるとなんかなのはにはあまり言えそうに無い感じな気がする……
 でも……なのははお話を聞きたそうだし……
 あぅ……どうしたら良いんだろ?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「フェイトちゃん?」
「えっと……」
 私はなのはに問い詰められて困ってたり。

 だって……出会いかたが出会いかただったし……
 出会った時のことを説明すると悠翔が神速を遣えるってことをなのはに言わないといけなくなる
 あ……でも……悠翔がなのはの従姉弟だって言ったからそれは誤魔化せないかも……
 流石になのはも不破って苗字が剣術に関係するってことは知っているんだろうし……

「悠翔とは……」
 私が諦めてなのはに悠翔とのことを話そうとした時……。
 誰かが翠屋に入ってくる。

 助かったかな……?

「ごめんごめん、遅くなってしもうたなぁ……」
 入ってきたのは私となのはの親友……八神はやて。
 はやての後からアリサとすずかも一緒に入ってくる。
 この時点で私が助かる可能性はゼロになってしまっている。
 私は誰にも気付かれないようにこっそりと溜息をつく。
 別にみんなと一緒にいるのが嫌なわけじゃ無いんだけど……。
 今回に限ってみれば話は別かも。

 これは覚悟しておかないと駄目かな……?
 全員揃ったんだから……私にはもう、逃げ道は無いし……
 どうしよう……?
 もう、悠翔とのことを話すのは決まっちゃったようなものだし……

「あれ、みんな一緒だったの?」
 入ってきたみんなになのはが話しかける。
 当然、なのはは私の様子には気付いていないみたい。
「違うわよ。私はすずかと一緒に来たけど、はやてとは翠屋の前で偶然会ったのよ」
 みんなを代表してアリサがなのはの質問に答える。
「そうなんだ〜。はやてちゃんは聖王教会に行ってたんだし……アリサちゃんとすずかちゃんも用事があったんだもんね」
「うん、そうだよ」
「私の方は予定より遅くなったからな〜。本当はなのはちゃんと一緒に行くつもりやったんやけど」
 はやてが笑顔で言う。

 と言うか……はやてはなのはと一緒に来るつもりだったんだ……
 聖王教会に行ってたのなら多分、はやてはアコース査察官のところに行ってる
 遅れたのもアコース査察官……ヴェロッサさんや騎士カリムに会いに行ってたからかな?
 なのはに気をつかったのもあるんだろうけど……
 多分、はやてもヴェロッサさん達に会いたかったのもあるんだと思う

「そっか〜そうなんだ〜。はやてちゃんも色々と上手くやってるんだね?」
 はやての言っている意味を理解しているすずかがはやてに確認するように尋ねる。
「うん、そうやよ〜」
 はやても満更でも無いように答える。
 はやてはなのはと違ってからかったりしても全く動じない。
 やっぱり……なれてるのかな?
 それとも……開き直っているだけ?
 どちらにしてもはやては上手くやっているみたい。
 まぁ……実際はヴェロッサさんとの関係はどうなのかは解らない。
 はやて自身は他に付き合っている人がいると公言しているから兄妹みたいなものだと思う。

 なのははユーノとは上手くいってるみたいだし……
 まぁ……アリサとすずかは別として……
 あれ……ということは……
 もしかして、そういう人がいないのは……私だけ?
















「で、なのはちゃんとフェイトちゃんはなんの話をしていたん?」
 すずかから上手くいってると言われて嬉しそうなはやてが私に質問する。
「そうよ、いったいなんの話をしていたのよ? なんか、あまり聞かないような名前も聞こえたけど」
 そう言って私を見ながら尋ねるのはアリサ。
「うん、それは私も気になってたよ。フェイトちゃんの様子からすると……その話題の人は男の子みたいだけど?」
 やっぱり、すずかも私となのはがしていた話の内容は気になってるみたい。
「うん、すずかちゃんの言うとおり男の子だよ」
 なのはがすずかの疑問に答える。
「は〜……男の子なんや〜」
「なっ……男の人ですって!?」
「へ〜……男の子なんだ〜?」
 はやて達3人の反応はそれぞれ三者三様で。
 やっぱり男の子の話題だってことに驚いているみたい。
 確かに……私達って男の子の陰があまり無いからね……。
「因みに……私もその人とは会ったんだけど……格好良かったよ?」
 更になのはが続けて言う。

 やっぱり……なのはにも悠翔は格好良く見えてるんだ
 私も悠翔のことは格好良いとは思ってるけど

「ふ〜ん……。じゃあユーノと比べたらどっちが格好良いの?」
 なのはの言葉にアリサが少しだけジト目をしながら尋ねる。
「それは当然、ユーノ君だよ! ユーノ君よりも格好良い人なんていないもん」
 なのはは当然……と胸を張りながら言う。
「……はいはい、解ったわよ」
 なのはの様子にアリサが呆れたように溜息をつく。
 アリサも多少はなのはの惚気に慣れているとはいえ、何度も聞くのは嫌なんだと思う。
 私も……流石に何度も惚気話を聞くのはきついし。
「で、その男の子は今、何をしてるのよ」
 なのはがこれ以上話をする前にアリサが私に尋ねる。
「えっと……今は外でユーノと話してるよ」
「ふ〜ん……なるほどね」
 アリサは私の返答に一応は納得する。
「それで、フェイトちゃん、その男の子はなんて名前なんや?」
 はやても気になるのか悠翔のことを尋ねてくる。
「えっと、不破……悠翔っていう名前だよ」
 私はおずおずとはやて達に悠翔の名前を伝える。
 はやては男の子の名前を聞いて満足そうに頷く。
 でも、アリサとすずかは何か考え込むような仕草をする。
「あれ? アリサちゃんもすずかちゃんもどないしたん?」
 考え込むような仕草をする2人にはやてが話しかける。
「うん、ちょっとね……」
「なんか……その名前は聞き覚えがあるのよね……どこかで会ったことがあるような気がするのよ」
「えっ……?」
 アリサの言葉に私は驚く。
「ま、私の気のせいよ。私達のまわりにはそんな名前の男の人なんて……」
 アリサが納得しようとしたその時……翠屋に誰かが入ってきた。
 多分、悠翔とユーノと思うんだけど。
















「ごめん、遅くなっちゃって」
 謝りながら入ってきたのは私の予想どおり悠翔とユーノ。
「すまない、随分と待たせた……」
 悠翔もユーノに続いて謝ろうとしたけど……。
 何故かそこで悠翔の言葉が途切れる。
 なんかアリサとすずかも驚いて悠翔のことをじっと見つめている。
「あれ? はやてにアリサにすずか……3人とも来てたんだ」
 はやて達に気付いたユーノが話しかけてくる。
「うん、ついさっきな。んで……ユーノ君と一緒に入ってきた男の子がフェイトちゃんの言ってた悠翔君なんか?」
「う、うん……そうだよ」
 ユーノの質問に答えたはやてが私に悠翔のことを尋ねる。
「なるほどな〜……確かにフェイトちゃんの言ったとおりやわ」
「あぅ……」
 はやての言葉に私は頬を染めながら俯く。
「それにしても……アリサちゃんとすずかちゃんはどうしたんや?」
 はやてが私に尋ねるけど……私にもその理由は解らない。
 というより私は悠翔のことをストレートに言われてそれどころじゃない。
 暫く、悠翔とアリサ達が見つめあって……。
 やがて、アリサが代表して口を開く。

「な、なんでアンタがここにいるのよーーーーー!!!!!」

 え……ええっ!? あ、アリサ!?
 いったい……どうして?
 それにすずかも悠翔を見ながら驚いた顔をしたまま。
 アリサ達の様子を確認して悠翔の様子を見てみると……。
 悠翔も少しだけ驚いた表情をしている。
 いったい……アリサ達と悠翔に何があったんだろ?



































 From FIN  2008/5/10



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