「もしかして……フェイトちゃん……。悠翔君のことを好きになっちゃった?」
 私が考えながら俯いているとなのはがとんでもないことを言いだした。
「え……? な、何を言ってるの?」

 私が悠翔のことを好き……?
 確かに悠翔には危ないところを助けて貰ったし……士郎さんとの立ち合い見せて貰った
 それに悠翔がどういうことをしていうのかも聞かせて貰った
 悠翔は私と同い年なのに護衛の仕事をしていて、強い覚悟も持っている人……
 そんな悠翔のことが気にならないと聞かれると嘘になる……
 でも……悠翔が好き……と聞かれると解らない
 私は悠翔のことをどう思ってるんだろ……?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「だって……フェイトちゃんはさっきから悠翔君のことを気にしてるよね?」
 なのはが私の顔を覗き込みながら尋ねる。
「う、うん……それは確かにそうだけど……」
 私はしどろもどろになりながらも答える。

 確かに悠翔のことを気にしていないかって聞かれると……嘘になる
 まだ、悠翔とは会ったばかりだけど……なんか目を離せない
 悠翔から聞いた剣の話、護衛の話、それから……覚悟の話
 私と同い年なのに悠翔は既にそれだけの考えも持っている
 それだけでも悠翔は気になる男の子だった

「だったら……フェイトちゃんが好きだっていうのなら応援するよ?」
「な、なのはっ……!?」
 なのはの発言に私は頬が熱くなる。
 悠翔のことを気にしているのは嘘じゃ無いけど、今の段階で悠翔が好きかと言われるとよく解らなくなる。
 私が悠翔をどう思っているかなんて……まだ、解らないから。
「そんなに慌てなくても別に悠翔君が好きだっていうのは悪いことじゃ無いんだと思うけど……?」
「で、でも……」
 なのはが頬を膨らませながら言うけど……私は戸惑うばかりだった。
「だって、私もユーノ君が大好きだもん。フェイトちゃんも好きな人が出来たら……変わると思うよ?」
 頬を紅く染めながらなのはがはにかむような笑顔でいう。

 本当になのははユーノが好きなんだ……

 なのははユーノのことを話すときは本当に幸せそうな表情をしてる。
 まぁ……ユーノとのことに関しては惚気を聞くことも多いんだけど……。

「だから、フェイトちゃんもファイト、だよ」
「う、うん……」

 ああ……なるほど……
 つまりは私も好きな人がいた方がいいってことなのかな?
 多分、なのははそう言いたいんじゃないかなって思う
 確かにユーノと恋人同士になってからのなのはは凄いんだけど……?
















「さて……とそろそろ翠屋の方に戻ろうか」
 暫く黙っていたユーノが話をきりだす。
 確かに思ったよりも長く話をしてしまった。
 フェイト達が俺達のことを気にしているかもしれない。
 だが、俺にはもう一つだけ試しておきたいことがある。
「いや、戻る前に……一つだけ試しておきたいことがある」
「なんだい?」
「……他愛も無いことだ」
 俺は一言だけ言ってユーノの首筋に小刀をむける。
 それも普通の人には全く見えない速度で。
「……なんのつもりだい?」
 ユーノは一瞬だけ驚いた表情をみせながらも冷静に言葉を返してきた。
 しかも、ユーノは目を逸らさずに俺を見つめている。
「……ユーノを試しただけだ」
 ユーノの視線を認めた俺は小刀をしまう。
 普通なら今のような真似をすればそこまで冷静ではいられないはずだ。
 確かに殺気はむけなかったが、それでも首筋に目にもとまらない速さで刃物を突きつけられたら恐怖を感じるのが普通だ。
 特に今のは殺気を消し、純粋な殺意のみで小刀をむけた。
 殺気を消して殺意だけをむけるというのは実はかなり難しい。
 殺気が無いのに殺意だけをむける……これは普通には出来ないことだ。
 寧ろ、殺意しか出せないのであれば純粋に人を殺すことも出来る。
 俺がこんな真似を出来るのは御神流の中でも裏である不破流を遣ってきたから出来ること。
 普通の剣士や武道家では出来ないことだ。
 だが、ユーノはその殺意だけしか無い俺の行動に臆することなく俺に視線を返してきた。
 これだけでユーノがどれだけのものを持っているかがなんとなく解る。
「ユーノも自分の心は決まっているんだな。やっぱり、なのはさんを護るためか?」
「……そうだよ。僕はなのはが怪我をしたあの時から決心したんだ」
 俺の投げかけた質問に対してユーノが臆することなく答える。
「なるほど……ユーノも大切な人ために……ということか」
「うん、そうなるね」
 ユーノの返事を聞いた俺は改めて考える。
 大切な人がいるだけでここまで自分の心を決められる。
 俺は既に御神の剣士としての覚悟は出来ている。
 そして、その剣で人々を護るということも。
 だが、俺には護りたいという気持ちになるような大切な人というのはいない。
 夏織さんや美沙斗さんといった人達は家族みたいなものだからそういった意味ではあてはまらない。
 それは、士郎さんや恭也さんにも同じことがいえる。
 俺が御神の剣士として先に進めないのは大切な人がいないからだと思う。
 それに……俺自身も大切だと想える人に出会いたいとそう思っている。
「そういうことなら……なのはさんを護ってやってくれ。あの人は強い人だけど孤独だとかを敏感に感じる人なんだ」
「うん……それは僕も解ってるよ」
「そうか、なら良い。俺からは何も言わない」
 ユーノがなのはさんのことをよく考えているということを確認した俺はユーノに突きつけていた小刀をしまう。
(なのはさんはこれだけユーノに想われているんだな……。いや、なのはさんもユーノのことを強く想っている)
 これだけ強く想える人がいる……それはやっぱり良いことなんだと思う。
 恭也さんにも忍さんがいて、士郎さんにも桃子さんがいる。
 それに……美沙斗さんには静馬さんと美由希さん、夏織さんには士郎さんと恭也さんが……。
 だが、俺にはまだそんな人がいるわけじゃない。
 確かに今まで出会ってきた人達はみんな大切だ。
 でも……これだけ強く想うという人にはまだ出会ってはいない。
 俺もいつかはそんな人をみつけられるのだろうか?
















 あれから暫く……私はなのはからの惚気話を聞いていた。
 なのはがユーノのことを話すのはいつものことだったから気にしないようにはしていたんだけど……。
 今回はいつもとは話の流れが違った。
「で、フェイトちゃん。悠翔君との出会いはどんな感じだったの?」
 一通りユーノとのことを惚気たなのはが興味津々な表情で問いかける。
「え……? 悠翔との出会い?」
「うん。なんかフェイトちゃんは会ったばかりのはずの悠翔君と親しそうだし……」
 なのはの悠翔と親しいという言葉に頬が熱くなるのを感じる。
 けど、なのはは構わず言葉を続ける。
「それに……男の子とはあまり話さないフェイトちゃんがあれだけ気にしてるんだもん。気になるよ」
「そ、そうかな?」
「そうだよ! だから、お話聞かせて……?」
 なのはが”お話聞かせて?”って言う。
 こう言っている時のなのはは本当にお話をするまで逃がしてくれない。

 逃げ道を塞がれちゃったかな……?

 私のことをじっと見ているなのはを後目に私はそう思う。
 
 悠翔との出会い……
 え〜っと……

 とりあえず私は悠翔との出会いを思いだしてみる。

 怖い男の人に絡まれてるのを助けて貰って……
 私はその時に悠翔に抱きついて……?
 それから……翠屋に案内している途中で転びそうになった私を助けてくれて……
 それで、その時に悠翔に胸を触られて……?
 あれ……ど、どうしよう……?
 こうやって考えてみるとなんかなのはにはあまり言えそうに無い感じな気がする……
 でも……なのははお話を聞きたそうだし……
 あぅ……どうしたら良いんだろ?



































 From FIN  2008/5/8



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