「だから、悠翔が悪いんじゃ無い、よ」
 驚いたような表情をしている悠翔に私はもう一度、伝える。
 これで納得したのか悠翔も漸く頷く。
 暫く私のことを見つめて……悠翔が視線を別の方向に移す。
「悠翔……?」
 私も悠翔が視線を移した方向に思わず目を向ける。
 そこに見えているのは……私がよく知っている人……。
 私の親友で……私の恩人……。
















 ――――高町なのは






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「フェイトちゃ〜ん」
「なのは」
 私の親友でもあり恩人でもあるなのはが駆け寄ってくる。
 少し後からなのはの彼であるユーノの姿も見える。
「ごめんね、フェイトちゃん。折角の休みだったのに一緒にいられなくて」
「ううん、別に気にしてないよ。それに……なのはもユーノと一緒にいた方が良かったよね?」
「ふ、フェイトちゃん!?」
 私の問いかけになのはが顔を紅く染めながら慌てる。
 なのはに追いついてきたユーノも苦笑している。
 多分……私の言ったことがあたっているからだと思う。
 なのはとユーノは見てる方が恥ずかしくなるくらいだから……。
 私にはそんな相手はいないからこんなふうに感じるのかな?
「もう……フェイトちゃん……」
 少しだけ落ち着いたのかなのはが頬を膨らませながら私に話しかける。
 すねたような表情のなのはは同じ女の子の私から見ても可愛らしい。
 頬を膨らませたまま私を上目づかいで見ていたなのはだったけど、私の傍にいた悠翔に気付く。
「あれ……? フェイトちゃん……この人は?」
 なのはが首を傾げながら悠翔を見つめる。
「あ、この人は……」
 私がなのはの質問に答えようとすると……。
「……不破悠翔だ。なるほど……君がなのは従姉さんか」
 先に悠翔が自分の名前を伝える。

 って……あれ?
 今、悠翔はなのはのことを従姉さんって言わなかったかな?
 あ……そうか、悠翔はなのはの従姉弟だもんね
 そう呼んでも可笑しくないよね
 でも……なのはの方は……?

「えぇぇ〜!? ね、従姉さんって!?」

 あ……やっぱりなのはも驚いてる
 普通……いきなりそういうふうに呼ばれると驚くよね?
 悠翔となのはは初対面みたいだし……
 それに悠翔もわざとそう言っているわけじゃ無いんだと思うけど……
 流石に知らない人から呼ばれると吃驚すると思うよ?
 多分、悠翔は気付いていないんだろうけど……
















「……もしかして、恭也さんや士郎さんから俺のことを聞いていないのか?」
 なのはの様子を見て驚きながら悠翔がなのはに話しかける。
「あ……はい」
 なのはも悠翔に話しかけられたことに少しだけ驚きながらも答える。
「……そうか。あの人達らしいな」
 なのはからの返答を確認した悠翔は納得したような表情で頷く。
 悠翔の様子に私となのはは首を傾げるばかり。
 ユーノの方はなんとなく悠翔の言いたいことを理解しているのか苦笑いをしている。
「えっと……」
 悠翔とユーノの様子になのはは戸惑うばかり。
 慌てているなのはを見かねたのか悠翔が口を開く。
「俺は士郎さんの弟である一臣父さんの息子……。要するに……なのは従姉さん、俺と君とは……従姉弟同士なんだ」
「ふぇ……? お父さんの弟さんの一臣さんって……?」
 なのはが悠翔の言ったことにさらに驚く。

 あれ……?
 なのはは一臣さんのことは知らないのかな?
 でも……恭也さんと士郎さんはなのはには悠翔のことを伝えていそうに無いよね
 桃子さんも悠翔のことは知らなかったし……
 多分、恭也さんと士郎さんは一臣さんのこともなのはには伝えて無いのかもしれない

「なるほど……恭也さん達は何も伝えていないってことなのか。それもらしい、と言えばらしいけど……」
 何も聞いていないなのはの様子を確認した悠翔が溜息をつきながら言う。
「え、え……? どういうことなの?」
 なのはは相変わらず目を白黒させるばかり。
 そんななのはにユーノが助け舟を出してくれる。
「なのは、落ち着いて。この人は……恭也さんと士郎さんに所縁のある人だって言っているんだ」
「ふぇ……?」
「でも、恭也さんと士郎さんはなのはには君の存在を伝えていない……そうだよね?」
「……ああ」
 ユーノはなのはと違って落ち着いて悠翔の言ったことに返答を返す。
「それにしても……君は冷静だな? 普通は俺の言ったことに驚くと思うんだけど……」
「……まぁね。僕も一応は色々とあるからね」
「なるほどな……。君の名前は?」
 ユーノの言葉に納得したのか悠翔がユーノの名前を聞く。
「ユーノ……ユーノ=スクライア」
「ユーノ=スクライア、か……。とりあえず、君のことはユーノって呼ばせて貰っても良いか?」
「うん、それで良いよ。それじゃあ……僕も悠翔って呼ばせて貰っても構わないかな?」
「ああ、よろしく頼む。……ユーノ」
「此方こそ、よろしく。悠翔」
 悠翔とユーノはお互いに自己紹介をして軽く握手を交わす。

 男の子同士ってなんかこう……
 私達、女の子じゃ解らないようなことも理解しているっていうか……
 こういうのって……なんか妬けるかな……?
















「えっと……ゆーと君で良いのかな?」
 ユーノと軽くお喋りをしている悠翔になのはが言い辛そうに話をきりだす。
「ああ、別に良いけど……なるべく”悠翔”で呼んでくれ」
 なのはの名前の呼び方に悠翔が苦笑する。
「うん、解ったよ。それで……ゆーと君……じゃなくて悠翔君はお兄ちゃんやお父さん達と知り合いだって言ってるけど……もしかして?」
 なのはが悠翔に尋ねる。
 多分、なのはが悠翔に聞きたいのは剣術のことなんだと思う。
 今まではなのはも恭也さん達の扱う剣術のことはあまり知らなかったみたいだけど……。
 先日に恭也さんと模擬戦をして以来からは少しだけ剣術の話も聞いている。
 なのはが悠翔にそのことで話を聞くのは可笑しいことじゃ無い。
「……ああ。多分、なのは従姉さんの考えているとおりだと思う」
「あっ……そうなの? だったら私が知らなかったも無理はないのかな?」
「ああ、そうだな。まぁ……俺の方はなのは従姉さんのことは士郎さんから聞いていたんだけど」
「そっかぁ……そうなんだ〜」
 なのはは少しだけ照れくさそうにしながら悠翔に微笑む。

 もしかして……士郎さんが悠翔になのはのことを伝えていたのが嬉しかったのかな?
 なのはにとって悠翔は今まで会ったことの無い従姉弟だったんだし……
 でも、会ったことが無いはずの人が自分のことを知ってくれているっていうのは嬉しいよね?
 少しでも興味を持ってくれてるってことだし……
 でも……なのはの方はなんで悠翔のことを聞いてなかったのかな?
 なのはは一臣さんのことも知らなかったみたいだし……
 もしかしたら……なのはは夏織さんのことも知らないのかもしれない
 それだけ悠翔はなのはにとって複雑な立場にあるのかも……?



































 From FIN  2008/5/1



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