「まぁ、それだけ夏織さんは優れた人だよ」
 驚く私を後目に悠翔はなんてことも無いように夏織さんのことを説明する。
「……それって凄すぎだよ」
「確かにフェイトの言うとおりかもな。でも、俺のまわりはそんな人ばかりだ。夏織さんや美沙斗さん以外にも啓吾さんも恐ろしく強いからな」
 悠翔は特に啓吾さんの強さには吃驚する、と付け加える。
「そ、そうなんだ……」
 私は悠翔の恐ろしく強いという言葉になんて言えば良いのか解らない。

 というか……さっき言っていた陣内啓吾さんも夏織さん達とも戦えるんだ……
 しかも……吃驚するくらい強い……?
 なんか……悠翔から聞いた人達みんなそんなのばかりな気がする
 え〜っと……悠翔が言ってた人達は……
 恭也さんに士郎さんに美由希さん……それから夏織さんに美沙斗さんに……啓吾さんだったかな?
 こう考えてみると……本当に悠翔のまわりって凄い人ばかりだよね?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「……そんなに驚かなくても良いと思うんだけど」
「だって……」
 悠翔が私を見ながら呆れたかのような表情をする。
 けど、悠翔はすぐに表情を変え、苦笑いをする。
「確かに今言った人達が全員凄いのは否定しないけど、な」
「……うん」
 私は悠翔の言ったことに頷く。
 悠翔の言っていた人達は本当に凄い人達ばかりだと思う。
 もしかしたら……管理局の魔導師達よりも強いかもしれない。
 ううん、陸戦だったらどんな魔導師よりも強いと思う。
 私が思うには……悠翔くらいの強さで陸戦のSランクも超えているかもしれない。
 それも、全く魔力が無い、一般人なのに。
 いや……魔力が無くてSランクくらいの戦闘力くらいがあるとするなら……。
 実際は悠翔達のランクは不明なのかもしれない。
 悠翔達の扱う力は魔法とは全く違うものなんだしね。
 それに悠翔達の攻撃は感知出来ないようなものがあるから未知の反応を示すだろうし。
 それだけ、悠翔の剣術は凄いものに見える。

 でも、その悠翔が一番弱いっていうんだから……
 恭也さんに士郎さん……それから……美由希さんに美沙斗さん……
 そして……夏織さんに啓吾さん……
 この人達はどれだけ強いんだろう……?

 解っていることは……少なくとも悠翔は私よりも強いと思う。
 真・ソニックフォームの状態でも悠翔の神速の方が私よりも速い。
 私は速度を生かした攻撃重視のスタイルが一番、力を発揮出来るんだけど……。
 悠翔達の遣う神速の前では私の速さも超えられてしまう。
 実際に恭也さんと戦った時には神速で速度を超えられた上に……。
 あの時の恭也さんは神速から更に神速に入ってた。
 間違いなく、真・ソニックフォームから魔法によるクイックムーブを遣うことが出来たとしてもあんな速度は出せない。
 そもそも真・ソニックフォームは私の魔力の殆んどを速度に回した形態だから……これ以上速度を上げるのは難しい。
 それでも速度においては私の魔法では神速の速度を上回れない。
 なのに……悠翔達は神速でその速度を上回り、更にはその速度の中で戦える。
 しかも、魔法を全く遣わずに。
 これだけでも私達、魔導士の戦闘よりもずっと凄い。
 きっと……シグナムやヴィータでも悠翔達の剣術には敵わないかもしれない。
 私にはそれだけ悠翔達の扱っている剣術は得体がしれないものに見える。
 それに……悠翔達の遣っている剣術以外にも凄い力を持っている人達もいるみたい。
 悠翔が教えてくれたHGSの患者の人達……。
 恭也さんが言っていた霊力っていう力を持っている人達……。
 他にも士郎さんや悠翔の口振りからすると剣術とかとは違う力で士郎さん達とも互角に戦える陣内啓吾さん……。
 確かにこの世界の人達は魔法とは全く違う力で戦っている……。
 それも、全てが自分の身一つで……。
 悠翔が強いのも、恭也さんが強いのも、士郎さんが強いのも……魔法が無いからこそで……。
 しかも、悠翔は私と同じ年齢なのに”覚悟”っていうのが出来てる……。
 本当に凄い……よね?
















「さて……と……そろそろ片付けるか。これ以上やっても無理をするだけになるからな」
 悠翔がそう言って木刀を片付ける。
 あれからそんなに時間は経って無い。
 でも、悠翔は道具を片付け始めている。
「あまりよく解らないかもしれないけど……立ち合いをした後は結構、きついんだ」
「あ……」
 私は悠翔が立ち合いの後は……と言うことにはっとする。
 短い時間だったとしても……真剣に戦うっていうのは練習よりも疲れるっていうのは私も解ってるから……。
「それに今日は朝から訓練をした上で海鳴まで移動してきたからな。予想以上に身体が重い」
 だから悠翔が言っていることはそのとおりだと思う。
 やり過ぎた訓練っていうのがどういう結果をもたらすかなんて私だって良く知ってる。

 だって……なのはがそうだったんだから……

「……だから、今日はここまでだ。大体のイメージトレーニングも出来たしな」
「うん」
 私は少しだけ複雑な思いを抱きながらも悠翔の片付けを手伝う。

 悠翔は無理をし過ぎたらどうなるか知ってる……
 そういえば悠翔も腕を怪我してるって言ってたけど……
 悠翔が短い時間で訓練を止めたのもその影響が大きいのかな……?
















「さて……片付けも終わったし……翠屋に行こう」
「うん」
 片付けの終わった悠翔に促され私は悠翔について道場を出ていく。
「……フェイト」
 道場を出て翠屋に向かう途中で悠翔が私の声の名前を呼ぶ。
「……今日は悪かったな」
「え……?」
 いきなり私の名前を呼んだかと思うと悠翔が謝る。
「なんか……俺の都合に付きあわせてしまって」
 悠翔が申し訳なさそうな表情で私を見つめてくる。
 でも、私は悠翔がそんな表情をする必要は無いと思うから……。
「ううん、別に気にしないで。」
 私は悠翔に気にしないで良いと答える。
「けど……っ」
 悠翔はそれでも自分が悪いと思っているのかまだ私に謝ろうとする。
「だって……私が好きで悠翔に付きあったんだから……悠翔が気にする必要なんて無い、よ」
 どうしても自分が悪いと思っている悠翔を納得させるために私は少しだけ恥ずかしいけど……本心を伝える。
「……フェイト」
 私の言葉に驚いたのか悠翔が私を見つめる。
「だから、悠翔が悪いんじゃ無い、よ」
 驚いたような表情をしている悠翔に私はもう一度、伝える。
 これで納得したのか悠翔も漸く頷く。
 暫く私のことを見つめて……悠翔が視線を別の方向に移す。
「悠翔……?」
 私も悠翔が視線を移した方向に思わず目を向ける。
 そこに見えているのは……私がよく知っている人……。
 私の親友で……私の恩人……。
















 ――――高町なのは



































 From FIN  2008/4/28



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