「そうか。それだけ、奥義を使えるのなら腕の怪我の調子は大分、良いみたいだな」

 え……?
 今、恭也さんはなんて言ったの……?

 私は恭也さんの言ったことをもう一度頭の中で考える。

 腕の怪我……って言ってたよね?
 じゃあ……悠翔は腕に何かあるの……?
 
「ええ……以前の護衛で一度は壊した腕ですが、状態は大分良いですよ……今は痛みもあまり無いですから、ね」
「……そうか。だが、無理だけはするなよ。俺と同じようになってしまうからな」
 悠翔の言葉を聞いた恭也さんが膝を見ながら悠翔を諭すように言う。
「……解っています。俺のこの手は護るためにあるんですから」
 恭也さんの言葉に悠翔は力強く頷く。
 でも……私は別のことで頭がいっぱいだった。

 恭也さんはあれだけ強いのに……
 もしかして……恭也さんも身体のどこかが……?
 それに……悠翔も……一度、腕を壊してるって言ってたけど……?
 いったい、どんなことをしたらそうなるの……?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「あの……悠翔?」
「どうしたんだ、フェイト?」
「腕を壊した……ってどういうことなの?」
 私は思わず悠翔に質問する。
「ああ……そのことか。以前に腕を壊したっていうのは……俺が護衛の時の怪我がもとで腕が使えなくなった時期があるんだ」
「え……?」
「今はもう大丈夫だけど……怪我をしたころは片手だけで小太刀を遣っていた。俺が恭也さんに言っている腕を壊したっていうのはその時の名残だよ」
「そうなんですか?」
 悠翔が嘘を言っているとは思わないけど私は念のため恭也さんに確認する。
「ああ、本当だ。悠翔は護衛の時に負傷して、一時期は小太刀を片手だけで遣っていた時がある」
「そうですか……」
 悠翔も恭也さんも同じことを言っている。
 それなら……本当のことなんだと思う。
 でも……片手しか遣えない時期があったなんて……悠翔も無理をして怪我をしたのかな……。
「けど、その怪我の影響で俺は剣士として次の段階に進めたから。それに誰かを護るために出来た傷だから俺は別に気にしていない」
「……悠翔」
 そう言っている悠翔の目は嘘を言っていないみたい。
 腕を怪我したことで強くなったっていうのも本当みたい。

 でも……そうやって無茶をして……
 悠翔と恭也さんが言っているみたいに怪我をして……
 そこまでして護ろうとするなんて……
 悠翔は本当に覚悟があって剣を遣っているみたい……
 私達も何か意思があって魔法を遣っているけど……
 悠翔達みたいな覚悟を持っているかは解らない、かな
 私も覚悟はしているけど……
 悠翔みたいに身体一つではきっと出来ない
 これが……私達と悠翔との違いなのかな……?
















「……忍、母さんが呼んでるぞ」
 なんとなく重い感じの空気に気付いたのか恭也さんが忍さんに話しかける。
 ちょうど桃子さんが忍さんを呼んでいたみたい。
 もしかして、桃子さんもなんとなく私達の空気に気付いていたのかもしれない。
「うん。あ……悠翔君とフェイトちゃんはゆっくりしてても良いよ」
「……でも」
「悠翔君とフェイトちゃんはお客さんだから気にしないで。それに……」
 忍さんが悠翔の耳元に顔を近づける。
「あの時の御礼もまだだったしね」
「いや……俺は……」
 悠翔がなんて言ったら良いのか解らない表情をする。
 忍さんは悠翔にだけ聞こえるように話してるから……なんて言ってるのか解らない。
 忍さんは一言、二言だけ悠翔と話して翠屋の奥に入っていく。
 私は困っているような表情をしている悠翔を覗き込む。
「悠翔、忍さんと何を話してたの?」
「あ……いや、此方の話だよ。気にしないでくれ」
「うん、解ったよ」

 そうだよね……悠翔も聞かれたくないことってあるよね
 特に秘密にしていようと思っていることなら尚更だと思う
 でも、やっぱり気になるかな?
















「じゃあ……私達は何しようか?」
 私はこれ以上の追及はいけないと思い、悠翔にこれから何をするかを質問する。
「そうだな……フェイトはどうしたい?」
「私……?」
 私が質問をしたはずなのに逆に悠翔から質問を返されて私は逆に困ってしまう。
「フェイトは一度、家に戻るか? 多分、時間はもう少しかかるだろうからな」
 困っていた私に恭也さんが私に提案をする。

 確かに一度、家に戻っても良いけど……
 かと言って悠翔のことも気になるし……

「でも……」
「それとも、俺と悠翔の話を聞きたいか? 俺はもう暫く悠翔と話そうと思っていたんだが」
「え? 良いんですか……?」
「ああ、悠翔が良いならな」
 恭也さんの言葉に私は思わず悠翔のほうを振り向く。
「恭也さんが良いって言ってるんだから俺は別に構わない。でも、フェイトには解らない話が殆どだぞ?」
「うん、別に良いよ。私も悠翔と恭也さんの話って興味があるから」
「……そうか」
 悠翔は一言だけ言って恭也さんの方を向く。
 恭也さんは悠翔が向いたのを確認し口を開く。
「さて……話も纏まったことだし……悠翔の最近の状況でも聞こうか。俺と会ったのは昨年の事件よりも前だったからな」
「そうですね……。昨年の事件の時は夏織さんと行動していましたからね」
「なるほど……あの人と、か……」
 恭也さんが何かを考えるような表情をする。

 あれ……そういえば士郎さんも夏織さんという名前で何か反応していたような……?
 そして、恭也さんもその夏織さんとは何かあるみたい
 まず、恭也さんと士郎さんの知り合いなのは間違いないと思う
 特に恭也さんと士郎さんは夏織さんのことをかなり気にしているから……
 ただの知り合いとは違うんだと思う
 それに……悠翔とも親しいみたいだけど……?
 恭也さんと士郎さんがこんなに気にしているなんて……
 夏織さんって本当に誰なのかな?



































 From FIN  2008/4/15



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