「あら……フェイトちゃん……もしかして悠翔君のことを考えてる?」
「えっ……? そ、そんなことっ……」
 私が桃子さんの言葉に頬を染めながら慌てていると翠屋の扉が開く。
「まったく……母さんもいい加減にしろ。フェイトが困っているじゃないか」
 翠屋に入ってきた人は私にとっても馴染みのある人……。
 そして、悠翔が会いたいと言っていた人……。
















 ――――高町恭也さん






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「え〜別に悪いことはしてないわよ?」
「母さんに悪気が無くてもフェイトの方が困っているだろうが。……すまないな、フェイト」
「い、いえ……」
 恭也さんが私に頭を下げる。
 恭也さんは本当に申し訳なさそうで……私もなんか毒気を抜かれてしまうような感じがする。
 元々は私が慌ててるのが悪いんだけど……。

 あぅ……なんか私の方が申し訳無い気持ちになってきちゃったよ……

「フェイトちゃん。もし気を悪くしたのならごめんね? 私、やりすぎちゃったかも」
「桃子さん……」
 恭也さんが頭を下げたのを見た桃子さんも私に謝ってくる。
 でも、恭也さんも桃子さんも私に謝ることなんて無い。
 確かに私が慌ててたのはあるんだけど……それは私の問題だし……。
「気にしないでください。桃子さんの言ってたことは嘘とは言えないですから」
 私は悠翔にちらっと視線をおくる。
 悠翔は私の視線に気付いているみたいだけど……私がどういう意味で視線を送ったかは解ってないみたい。
 視線の意味が解らずに悠翔は首を傾げる。
「だから、私の気持ちがはっきりした時に……お願いします」
 悠翔が言いたいことを理解していないことを確認した私は桃子さんに自分の意志を伝える。
「解ったわ。その時は遠慮なく聞いてね」
「はい……!」
 桃子さんは私の言っている意味に気付いてくれたらしく私の言葉に頷いてくれる。
 でも……私の気持ちは本当に悠翔に向いているのかは解らない。
 まだ、悠翔とは会ったばかりで私自身の意志も何も解らないけど……。
 私はきっと……悠翔の何かを気にしてると思う。
 それは何か解らないんだけど、ね。
















「さて……何やら母さんのせいで可笑しな話になってしまったが……久しぶりだな悠翔」
「はい、久しぶりですね。恭也従兄さん……いや、恭也さん……それに忍さんも」
 漸く私と桃子さんの話が落ち着いた後、恭也さんと悠翔が改めて挨拶をする。

 ……忍さん?
 でも……忍さんは何処にもいないように見えるけど……?

「あはは〜悠翔君には気付かれちゃってたね」
 私が忍さんを見つけられずにいると忍さんが苦笑いしながら翠屋に入ってくる。
「ええ、隠れて驚かそうと思ったんでしょうけど……気配がしましたからね」
「まぁ……俺達の場合は慣れてるからな」
 恭也さんが少しだけ呆れたように忍さんを迎える。

 それにしても慣れてるって……
 私には忍さんの気配なんて解らなかったのに……

「それにしても悠翔……久しぶりだな。会ったのは……あの時の護衛以来か?」
「ええ、そうですね。恭也さんと会ったのは昨年の事件の時よりも前の時の仕事でしたから」
 悠翔が懐かしむように恭也さんに答える。
「ふむ……あの時と比べると……悠翔も相当強くなっているな。近いうちに俺と軽く撃ち合ってみるか?」
「良いんですか?」
「……ああ。母さんと美沙斗さんから聞いたが悠翔は既に御神不破の免許皆伝にまでなっているようだな」
「……はい」
「だったら、今の悠翔なら俺とも戦えるはずだ。今日は父さんと戦ったんだろう?」
「……はい。正直な話、まともに戦えたような気はしませんでしたが」
 悠翔は今日の立ち合いを思い出したのか少しだけ肩を落とす。
 恭也さんは電話で今日の立ち合いのことを既に聞いていたのか悠翔を励ますように頭に手を置く。
「それでも、悠翔は確実に強くなっているんだから何時かは俺達とも戦えるようになるさ」
「……恭也さん」
「それに……今の悠翔は人を護れるだけの力も持っている。悲観することも無いだろう」
 恭也さんも士郎さんが言っていたのと同じように悠翔に人を護れるだけの力があるって言う。

 悠翔がどれだけの力を持ってるかなんて解らないけど……
 恭也さんと士郎さんが言うには悠翔は相当な力を持っているってこと
 今日見た限りでは悠翔がどのくらいの力の持ち主だなんて解らなかったけど……
 私達よりもずっと強い恭也さんと士郎さんがそう言ってるなら悠翔が強いのは本当だと思う
 でも……私にとってはなんとなく悠翔が危うく見えるのは……気のせいなのかな?
















「そういえば、悠翔。今日は父さんと立ち合いをしたということだが……二刀で戦ったのか?」
「……はい。とはいっても俺が二刀を使ったのは射抜・追を使った時の攻防だけなんですけど」

 二刀を使う……?
 確かに今回の士郎さんとの立ち合いで悠翔が二刀を両方とも使ったのは最後の時だけ……
 でも、それになんの意味が……?

「そうか。それだけ奥義を使えるのなら腕の怪我の調子は大分、良いみたいだな」

 え……?
 今、恭也さんはなんて言ったの……?

 私は恭也さんの言ったことをもう一度頭の中で考える。

 腕の怪我……って言ってたよね?
 じゃあ……悠翔は腕に何かあるの……?
 
「ええ……以前の護衛で一度は壊した腕ですが、状態は大分良いですよ……今は痛みもあまり無いですから、ね」
「……そうか。だが、無理だけはするなよ。俺と同じようになってしまうからな」
 悠翔の言葉を聞いた恭也さんが膝を見ながら悠翔を諭すように言う。
「……解っています。俺のこの手は護るためにあるんですから」
 恭也さんの言葉に悠翔は力強く頷く。
 でも……私は別のことで頭がいっぱいだった。

 恭也さんはあれだけ強いのに……
 もしかして……恭也さんも身体のどこかが……?
 それに……悠翔も……一度、腕を壊してるって言ってたけど……?
 いったい、どんなことをしたらそうなるの……?



































 From FIN  2008/4/13



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