でも……私にとっては逆に疑問が増えちゃったかな……?
 夏織さんという人も陣内啓吾さんという人も聞いたことが無いし……
 しかも、2人とも凄く強いみたい
 でも……なのはからもそういう人達がいるなんて聞いたことが無い……
 美沙斗さんは何度か会ったことがあるけど……その夏織さんは会ったことも無いかな……
 士郎さんの言い方を聞いてると陣内啓吾さんは知り合いで、夏織さんの方にはなんかありそうな感じなんだけど……?
 なんとなく士郎さんは夏織さんのことを気にしているような感じだったし……
 それに……夏織さんは悠翔とはどういう関係の人……なのかな?






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「フェイト……何を考えているんだ?」
 私の様子に気付いた悠翔が私を見つめる。
「ふぇ……? な、なんでもないよ」
 また、考えごとをしてたのが悠翔に気付かれたみたい……。
 それにしても……悠翔は私のことをよく見てる。
 多分、私が何を聞きたいのかにも気付いているんじゃないかと思う。
 でも……私が悠翔を見てどきっ……としてることには気付いて無いような気がする。
「ま、良いか。そろそろ、俺達も翠屋に行こう」
 軽く背伸びをしながら悠翔が私に促す。
「もう、身体は大丈夫……?」
 悠翔は大丈夫そうにしてるけど……私は念のため質問をする。
 さっきの立ち合いでは悠翔は間違い無く士郎さんの一撃をまともに受けていたから……。
「ああ、大丈夫だ。見かけほどの痛みは無いよ」
「なら……良いんだけど……」

 悠翔はなんでもないような顔をしてるけど……
 本当は痛いはずだよね……?
 木刀って結構、痛いと思うし……
 でも、悠翔が我慢してるようにはとても見えない

「心配してくれるのは嬉しいけど……本当に大丈夫だから」
「……うん」
 悠翔が私をあやすように軽く頭を撫でる。

 なんか今日は何度かこうやって撫でてもらってるけど……
 やっぱり……嬉しくも、恥ずかしくもあるよね?
 悠翔に頭を撫でてもらうとつい、頬が熱くなる
 なんとなく、どきっ……としてしまうのはどうしてかな?
 私はまだ……悠翔のことを好きになったわけじゃないと思うし……
 悠翔も私のことが好き……っていうことは無いと思う
 それに私と悠翔は出会ったばかりだし……お互いのことは殆ど知らない
 私にも今は言えない秘密があるけど、それは悠翔だって同じ
 悠翔にも言えない秘密があると思う
 でも、それなのに悠翔に対してどきっ……とする私がいる
 私は悠翔のことを知らないのに……
 本当に……どうしてなのかな……?
















「さて、と……これ以上、士郎さんと桃子さんを待たせるわけにもいかないな」
 悠翔が頭を撫でるのを止めて私に促す。
「あ……うん」
 私は悠翔に言われて頷くけど……。

 少しだけ……残念……?
 悠翔に頭を撫でて貰うのって嫌な気持ちじゃないし……
 でも、悠翔に我侭を言うわけにもいかないから……

 私は何も言わずに悠翔についていく。
 悠翔が私のことを少しだけ気にかけるような目を向けてくるけど……。
 私は「大丈夫だよ」というように悠翔に微笑む。
 心なしか悠翔の頬が紅く染まる。

 あれ……?
 私、何かしたかな……?
 悠翔の頬が紅く染まっているのは何度か見かけてるけど……
 でも、悠翔の場合はどうしてなのかな?
 私の場合はえっと……なんというか……
 抱きついてしまったりとか……転びそうになった時に胸を触られたりとか……頭を撫でられたりとか……
 ふぇ……?
 会ったばかりなのに結構、凄いことをしてるような……?
 しかも、私って悠翔の前じゃドジなところばかり見せちゃってる……?
 あぅ……これじゃ……私はドジな娘って思われてるかも……
















 私も悠翔も少しだけ頬を紅く染めながら翠屋に戻る。
 翠屋の方は既に店じまいをしていて桃子さんが今夜のための準備をしてくれているのが解る。
「あ、悠翔君。お疲れ様」
 戻って来た私達に気付いた桃子さんが声をかけてくれる。
「士郎さんとの立ち合いで疲れたと思うから……これを飲んでゆっくりと休んでて」
 桃子さんが悠翔と私に紅茶を出してくれる。
「それに……フェイトちゃんもお疲れ様。立ち合いに付き合って疲れたでしょう?」
「あ……いえ」
「ふふっ……それとも悠翔君に見とれちゃった?」
「も、桃子さんっ!?」
 桃子さんの言葉に私は思わず頬を紅く染めながら慌てる。
 でも、悠翔は首を傾げるばかりで私がなんで慌てているのか気付いていないみたい。

 確かに……見とれてたのは事実かな……
 悠翔と士郎さんの立ち合いは今まで私が見てきた中でも一番、凄い戦いかも
 あの立ち合いでの動きは殆ど目じゃ追いきれないくらいだったし……
 それに……私と同い年の悠翔があれだけ動けるのも私にとっては見とれる理由の一つ
 私も魔法で高速戦闘をやってるけど……悠翔の動きも私よりも速い
 恭也さんが使っていたものと同じものを使っているんだからそれは当然だけど……
 それ以上に士郎さんとその速度の中で攻防を繰り広げていたっていうのが一番の驚きだったかも
 士郎さんは普通だと言っていたけど……それでも私達にとってはありえないような立ち回りだったと思う
 それも生身一つでやっているんだから……

「あら……フェイトちゃん……もしかして悠翔君のことを考えてる?」
「えっ……? そ、そんなことっ……」
 私が桃子さんの言葉に頬を染めながら慌てていると翠屋の扉が開く。
「まったく……母さんもいい加減にしろ。フェイトが困っているじゃないか」
 翠屋に入ってきた人は私にとっても馴染みのある人……。
 そして、悠翔が会いたいと言っていた人……。
















 ――――高町恭也さん



































 From FIN  2008/4/11



 前へ  次へ  戻る