士郎さんと悠翔の立ち合い……。
 僅かな時間だったけど……その決着がついた時、私の目の前にはゆっくりと倒れていく悠翔の姿が見えた。
「悠翔っ!」
 私は悠翔が倒れていくのを見て咄嗟に悠翔の名前を呼ぶ。
 でも……悠翔には私の声が聞こえたのかは解らない。
 私はいても立ってもいられなくなって悠翔に向かって走り出す。
 悠翔が倒れる寸前、私はなんとか悠翔を抱きとめる。
「きゃっ……!?」
 悠翔を抱きとめたのは良かったんだけど……。
 私も咄嗟に悠翔を抱きとめた感じだったから悠翔が私の胸に埋まる形になってしまう。
 でも、今の私はそんなことは気にならなかった。

 だって……悠翔の方が心配だから……






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「……やりすぎたか」
 悠翔が意識を失ったことを確認した士郎さんがぽつりと呟く。
「やりすぎ……だと思います。もしかして……剣士同士の立ち合いって普段からこうなんですか?」
「ああ……そうだな。……基本的にはこんな感じだ」
「そんな……」
 私は士郎さんが肯定したことに唖然とする。
 今みたいなギリギリの戦い方で普通だなんて……。
「俺達、”御神の剣士”の本分は”戦って護る”ことだ。戦いということであれば俺達に”次”と言うのは無い」
「え……?」
 私は士郎さんの次は無いという言葉に驚く。

 次は……無い?
 次は無いっていうのは……私達、魔導師ではあまり考えられないこと
 魔法ではそうやって常に殺傷を前提として戦うなんてことは余程のことがない限りは考えられないから……
 でも、士郎さんの言葉が本当なら……悠翔達、剣士は常に命のやり取りをしてるってこと……
 しかも、悠翔は私達と同じ年齢で……

「命を懸けてでも護るべきものを護る……それが俺達、御神の剣士だ。だからこそ悠翔も今の年齢でこれだけの力を手に入れたんだろう」
 私の疑問に気付いているのか士郎さんが悠翔のことを見ながら言う。
「だが……それは、なのはやフェイトちゃん達も同じだろう」
「え……?」
「俺達とは形が違うが、なのはもフェイトちゃんもはやてちゃんもその年齢で大きな力を持っている」
「はい……」
「そういう意味では、悠翔があれだけの力を持っているのもあながち、ありえないというわけでも無いさ」
 確かに士郎さんが言っているのは本当かもしれない。
 私達も魔法ということでは大きな力を持っていると思う。
 でも、悠翔の場合はなんとなく私達の力よりも一線を超えてしまっているような気がする。
 命を懸けて力を振るうなんて……私達でもそこまでの覚悟あるかなんて解らない。
 けど、悠翔はその命を懸けるということに躊躇いが無いようにも見える。
「それに、悠翔は既に人を護るために何度も戦っているからな……覚悟も違う」
「……悠翔」

 そんな……
 悠翔も人を護るために何度も戦っていたなんて……
 私達だって闇の書事件だとかで戦ったけど……
 悠翔みたいに後が無いっていうことは殆ど無かったと思う
 それに私達の場合は魔法がある
 でも、悠翔の場合は何も無くて……自分の身体一つで……
 悠翔はいったい……どれだけのことをしてきたのかな……?

「そんな表情をしなくても良い。悠翔も自分で選んだ道なんだ。一番、理解しているのは悠翔自身だ」
 士郎さんが私の考えていることに気付いたのか、落ち着いた声で口を開く。
「悠翔は……だからこそ強い」
「そう……ですか……」
 私は士郎さんの言葉に納得はする。

 けど……そんなのって……
 ううん、悠翔が悪いんじゃない……けど……

 でも……私はそう思うのを止めることが出来なかった。
















 あれから暫くして士郎さんは意識を失ったままの悠翔を私に預けて翠屋に戻って行った。
 私は悠翔と2人だけで道場に残される。
「えっと……このままじゃ悠翔が辛いよね」
 私は悠翔を支えながらゆっくりと腰を下ろす。
 悠翔はまだ、気を失ったままみたい。
 やっぱり……さっきの士郎さんの一撃が聞いているのかも。
 後は、海鳴まで初めて来たって言ってたけど……その分で疲れていたのもあるのかもしれない。
 そう私に感じさせるように悠翔はまだ眠っていた。

 穏やかな表情……
 悠翔は士郎さんの立ち合いに満足してるんだ……

 私は悠翔を見ながらぼ〜っと考える。

 あ……そうだ

 ぼ〜っと悠翔を見つめてあることを思いつく。
「え〜っと……」
 私は一度、座り直してから悠翔の頭をゆっくりと私の膝の上に持っていく。
 私のその行動は、なのはとユーノがやってるのを見て私も一度はやってみたかったこと。

 膝枕……これで良いのかな?

 私は悠翔の頭を膝の上に持っていき、悠翔の首が痛くならないような体制にする。

 実際に男の子を相手に膝枕をするのは初めてなんだけど……
 少しだけ……恥ずかしい……かな?

 私は頬が熱くなるのを感じながらも悠翔に膝枕をする。
 悠翔は私の膝枕が気持ち良いのかほんの僅かだけ眠りが深くなったような気がした。

 こうやってじっくり見てみると……可愛いかも……?

 悠翔の様子を見ながら私は少しだけ微笑む。
 なんというか……悠翔の様子を見てるとなんとなくだけど、なのはの気持ちが解るような気がする。
 なのはもユーノを膝枕してとっても嬉しそうにしていた。
 それに……ユーノの様子を見ているなのははとても幸せそうだった。
 私の場合はまだ、なのはとは違う気持ちなんだろうけど……それでもなんとなく嬉しい気持ちになる。
 普段はなのはがユーノにしていること……。
 でも、今はこうやって私がなのはと同じことをしている。
 そう考えると少しだけ気恥ずかしい。
 でも、それはけっして嫌な気持ちじゃ無かった。
 寧ろ、嬉しいような幸せなような気持ち……。

 これが……膝枕をするってことなのかな……?



































 From FIN  2008/4/1



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