「フェイト?」
 私が悠翔のことを考えていたら知らないうちに悠翔が私の方を見つめていた。
「ふぇ……悠翔?」
「顔にクリームがついてるぞ?」
「え……?」
 悠翔がそう言って私の顔を優しく拭ってくれる。
「ゆ、悠翔っ……」
 私は悠翔がとった行動に思わず頬を紅く染める。
 悠翔はそんな私のことを笑顔で見つめていた。
 それを見た私はますます頬を紅く染めて俯いてしまう。

 あぅ……悠翔のしたことに別に文句は無いんだけど……
 って……私ったら何を考えてるんだろ……
 でも、今の悠翔の行為は普通なら初対面の女の子にはやらないこと……
 もしかして……悠翔も私のことを意識してくれてる?
 もし、そうだったら……嬉しいかな……
 だって……こんなにドキドキしてるのは私だけじゃ無いってことだから……





















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 私はさっきの悠翔のやりとりのせいで頬を紅く染めたまま桃子さんのケーキを食べる。

 あ、やっぱり……美味しい……

 悠翔にあんなことをされたから味が解らなくなってしまうくらい恥ずかしいかと思ってたけど……。
 桃子さんのケーキはそういうことを気にしなくても大丈夫だったみたい。

 うぅ〜でも、やっぱり恥ずかしいよ……
 別に嫌じゃ無かったけど……それとこれとは話が違うよ……

 さっきから全然、落ち着かない。
 だって……普通はいきなりあんなことされたら吃驚するし。
 それに……あんなことをしたのに悠翔はあまり気にしてないみたいだし。

 はぁ……なんか悠翔には可笑しなところばかり見せちゃってるかも……

 今みたいな私の姿なんてなのはやはやてにも見せたことが無い。
 別に普段の私がどうかっていうことじゃ無いんだけど……。
 少しだけそんなことを考えながらケーキを食べていく。
 となりをちらっと見ると悠翔もケーキを美味しそうに食べてる。
「ん……?」
 私の視線に気付いたのか悠翔が私のことを見ながら首を傾げる。

 やっぱり、悠翔って少しだけ可愛いかも……?

 悠翔の表情を見ながらそう思う。
 普通にしてると悠翔って格好良いんだけど……時々、見せる表情が面白い。
 なんとなく悠翔に自覚は無さそうだけどね。
















「ごちそうさまでした」
「美味しかったです、桃子さん」
 桃子さんのケーキを食べ終わり私と悠翔はそれぞれ御礼を言う。
「いえいえ、どういたしまして。2人とも美味しそうに食べてくれるから私も嬉しかったわ」
 私達から御礼を言われた桃子さんが嬉しそうに片付け始める。
「あれ……? 今日は翠屋は良いんですか?」
 桃子さんが片付け始めたのを見て私は訊ねる。
「ええ、折角、悠翔君が遠くから海鳴に来てくれたんだもの。今日の夜は悠翔君の歓迎会にしましょう」
「え、そんな……」
 悠翔は桃子さんの言葉に戸惑っているみたいだった。
「だって、悠翔君は士郎さんの家族なんでしょう? だったら私達にとっても家族よ」
 悠翔は桃子さんの言葉にはっとする。
「……桃子さん。すいません、ありがとう……ございます」
 そして、悠翔は桃子さんに頭を下げる。
「そう改めなくても良い、桃子の言うとおりなんだからな。それに……悠翔は一臣の忘れ形見だ。悠翔は俺にとっても息子みたいなものだからな」
 士郎さんが悠翔の頭を軽く撫でる。
「……士郎さん」
 悠翔は士郎さんに頭を撫でて貰って少しだけ戸惑いながらも嬉しそうにしている。
 そうやっている悠翔と士郎さんを見てると本当に親子みたい。
 そんな悠翔が微笑ましくて私も嬉しくなる。

 悠翔って普段はあまり甘えたりしそうに無いもんね……
 それに……悠翔の見てると多分、今までこういうことをされたことが殆どなさそう……
 そのあたりは……私と同じなのかな……
















「さてと……そろそろ道場に行くとするか」
 士郎さんがやがて、悠翔の頭を撫でるのをやめて口を開く。
「あ、はい。お願いします」
「じゃあ、俺は準備してから道場に向かう。悠翔の方も準備があるんならしておいてくれ」
「……解りました」
 悠翔の返事を確認した士郎さんは翠屋から家の方に戻っていく。
 悠翔も持ってきていた荷物を背負い、翠屋から出ていく準備をする。
「そういえば……フェイトは今からどうするんだ?」
 荷物の準備をしていた悠翔が私の方を向いて質問してくる。
「え……私は……」
 悠翔の質問に困った私は桃子さんの方を見つめる。
 桃子さんは悠翔の歓迎会の準備をするって言ってるし……。
 だったら、私もそのお手伝いとか……なのは達に連絡を入れるとか色々しないといけない。
 でも……悠翔が今からどんなことをするのかが気になる。
 純粋に興味があるって言われたら嘘じゃないけど……。
 それに、なんとなく……悠翔から目を離したくない……。

 ふぇ……?
 今……私、何を考えて……?
 悠翔から目を離したくないって……?
 どうして……私はこんなことを……?
 やっぱり、悠翔が私のことを助けてくれたから……?
 ううん……違うかも……
 解らないけど……悠翔の纏っている雰囲気から目が離せないんだ……

 なんとなくだけど私はそう思う。
 私が何を考えていることが解ったのか桃子さんが微笑む。
「フェイトちゃん、なのは達には私から伝えておくからフェイトちゃんは悠翔君についていっても良いわよ?」
「桃子さん……」
 桃子さんはやっぱり凄い。
 私が悠翔についていきたいって思っていたのなんてお見通しだったみたい。
「……フェイト」
「うん、私は悠翔についていくよ」
「……解った。でも、怖いものを見せることになるかもしれないぞ?」
 悠翔が念を推すように私を見つめながら言う。

 でも……私の応えは初めから決まっているから……

「大丈夫だよ、さっきも言ったと思うけど……私は悠翔のことを怖がったりしない、よ」
 だから、私は悠翔にはっきりと伝える。
 悠翔がどうだとしても私は怖がったりしない。
「ううん、もし……悠翔のことが怖いと思ったとしても悠翔から目を逸らしたりしないから」
「……解った。フェイトがそこまで言ってくれるのなら」
 そう言って悠翔は私の手をとる。
「ふぇっ……?」
 私はいきなりのことに頬を紅く染める。
「……今回の立ち合いは君に見届けて欲しい」
 悠翔が真剣な表情で私を見つめる。

 真剣な表情……
 悠翔は本当に自分を懸けて士郎さんに挑もうとしてるんだ……
 だったら私に出来ることは……

「はい……!」

 悠翔のその想いに応えること……
 ううん、私も見届けるっていう想いを悠翔に伝える
 それが……今の私に出来ることだから……


































 From FIN  2008/3/24



 前へ  次へ  戻る