「俺が……海鳴に来た本当の目的は……護りたい人を探すためです」
 私は悠翔の言葉にさらにどきっ……とする。
 悠翔が私のことを見つめたままで士郎さんに言葉を伝えたから……。

 護りたい人……?
 それって……ユーノにとってのなのはみたいに……?
 恭也さんにとっての忍さんみたいに……?
 私には解らないけど……そうなの、かな?





















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「そうか……それなら海鳴に来たのは間違いじゃ無いのかもしれないな」
 悠翔の話を聞いた士郎さんがやがて、ゆっくりと口を開く。
「俺も……恭也もこの海鳴で護るべき大切な人に出会えた。多分、悠翔がここに来たのも偶然じゃ無いだろう」
「そうですね。俺もそう思って海鳴に来ましたから」

 海鳴に来たことが偶然じゃ無い……?
 どういうことなのかな……?
 確かに私もなのはやはやて、それにすずかやアリサとも出会ってるけど……
 やっぱりこれも偶然じゃ無いのかな?

「フェイト?」
 私が海鳴のことを考えていると悠翔が声をかけてくる。
「どうしたの、悠翔?」
「いや……また、考えごとをしてるみたいだったからね。少し気になっただけだよ」
「ふぇ……?」

 あぅ……やっぱり見られてる……
 私の方は悠翔が何を考えているのか解らないのに……
 なんか、少しだけ不公平だよ……

 私はむぅっと頬をふくらませる。
 それを見た悠翔が可笑しかったのか少しだけ笑う。
「……悠翔?」
「あ、いや……ごめん」
 私が悠翔の顔を覗き込みながら言うと悠翔は苦笑しながら私から目線を逸らす。
 ほんのりと悠翔の頬が紅く染まっているような気がする。

 なんとなく意識してるのは私だけじゃないのかな……?
 実は、悠翔も結構、解りやすいのかも?

 悠翔の表情を見て私はなんとなくそう思う。
 少しの間だけ悠翔を見つめていたら、桃子さんが笑っていた。
「あらあら、フェイトちゃんは悠翔君みたいな人が好みなのかしら?」
「えっ……!?」
 思わず桃子さんの言葉に私は反応してしまう。

 悠翔みたいな人が私の好きな人……?

 そう思うと思わず頬が熱くなる。
 私は今まで男の子をそういうふうに意識をしたことは無かったから。
 多分……クロノにだってこういうふうな感じじゃ無かったような気がする。

 私……どうしちゃったんだろ……?
















「さて、このまま立ち話もなんだし……お菓子でも食べていかない?」
 あれから少しして桃子さんが提案してくれる。
「良いんですか?」
「気にしなくても良いわよ。悠翔君は随分と遠くから来たみたいだし……疲れてるでしょ?」
「……そんなことは」
「そんなことは無いとでも言いたいのか? そこは遠慮するところじゃないぞ?」
「あ……じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きます」
 はじめは桃子さんに遠慮していた悠翔だったけど、士郎さんに言われて漸く席につく。
「フェイトちゃんもどうぞ」
「え、あ……すいません、ありがとうございます」
 私も桃子さんの好意に甘えることにする。
 私もとりあえず悠翔のとなりの席に座る。
 悠翔は私がとなりに座ったことに少しだけ驚いたみたい。
「どうしたの?」
「いや……」
 私が訊ねると悠翔は少しだけ考え込むような表情になる。
 暫く悠翔は考えて、やがて口を開く。
「フェイトは……俺が怖くないのか?」
「え……?」
 悠翔が私に聞いてきたことはとても意外だった。

 悠翔が怖い……どうして?
 私はそんなこと無いのに……

「悠翔は優しい人だよ。見ず知らずの私のことを護ってくれた。私が悠翔を怖がる理由なんて無いよ?」
「フェイト……」
「たとえ、悠翔が自分で言ってたように悠翔自身が普通じゃないとしても……それだったら私だって同じ」
 そう……私だって”普通”じゃないから。
「だから、私には悠翔を怖がる理由なんて無いよ。それに悠翔は悠翔なんだし……だから……怖くない、よ」
 さっき悠翔が言っていたことと同じようなことだけど……私ははっきりと悠翔に伝える。
「……ありがとう」
 悠翔は少しだけ嬉しそうな表情で私を見つめる。

 ちょっと……照れくさいかな……

 今は悠翔のとなりに私は座っている。
 と言うことはどうしても悠翔と私の顔の距離は近くなってしまう。
 悠翔は実際に近くで見てみると格好良い方だと思う。
 印象とかは違うんだけど……見かけは恭也さんと士郎さんのどちらにも少し似てるのかな?
 でも、なのはとは違うかも。
 あ……そう言えば従兄弟なのかな?
 それだったら悠翔が恭也さんや士郎さんに似てるのは納得かも。
 さっきのお話でも悠翔のお父さんは士郎さんの弟さんだって言ってたし……。
















「はい、どうぞ」
 暫くして桃子さんがお菓子にショートケーキを持って来てくれた。
「あ、はい。ありがとうございます」
「悠翔君もどうぞ」
「すいません、いただきます」
 悠翔も桃子さんに御礼を言い、ケーキを食べ始める。
「……美味しい」
 こころなしか悠翔が嬉しそうに呟く。
 桃子さんのお菓子はどれも美味しいから悠翔がそう言うのは普通だと思う。
 私も桃子さんのお菓子は大好き。
 味だけじゃなくて、なんとなくだけど……心からそう実感出来る。
 こういうお菓子を作っている桃子さんは本当に凄いと思う。
 なのはも桃子さんに教わりながらお菓子を作っているのを見かけるけど……いつかは桃子さんみたいになるのかも。
 私もたまにお菓子作りや料理を教わったりしてるけど……桃子さんみたいには出来ないかも。
 でも、なんとなく悠翔は私の作ったものでも食べてくれそうな気がする。

 あれ? なんで私……
 こんなことを考えてるんだろ……?
 もしかして、私……悠翔のことをこんなに意識してるの?

「フェイト?」
 私が悠翔のことを考えていたら知らないうちに悠翔が私の方を見つめていた。
「ふぇ……悠翔?」
「顔にクリームがついてるぞ?」
「え……?」
 悠翔がそう言って私の顔を優しく拭ってくれる。
「ゆ、悠翔っ……」
 私は悠翔がとった行動に思わず頬を紅く染める。
 悠翔はそんな私のことを笑顔で見つめていた。
 それを見た私はますます頬を紅く染めて俯いてしまう。

 あぅ……悠翔のしたことに別に文句は無いんだけど……
 って……私ったら何を考えてるんだろ……
 でも、今の悠翔の行為は普通なら初対面の女の子にはやらないこと……
 もしかして……悠翔も私のことを意識してくれてる?
 もし、そうだったら……嬉しいかな……
 だって……こんなにドキドキしてるのは私だけじゃ無いってことだから……


































 From FIN  2008/3/21



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