私は俯きながら悠翔と一緒に翠屋へと向かっていく。
 でも、何となくだけど……悠翔と一緒にいるのは嫌な気持ちじゃなかった。

 どうして……かな?





















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















 翠屋への道を歩きながら私は悠翔の横顔をちらっと見る。

 やっぱり……似てるよね?

 悠翔を見て私はそう思う。
 なんで、恭也さんに似てるのかは解らないけど。
 それでも、雰囲気というかなんていったら良いのかな……。
「ん、どうしたんだ?」
「ううん、なんでもないよ」
「そうか……さっきから俺のことをちらちらと見てるから聞きたいことがあるのかと思ったんだけど」
「……そう見えた?」
「少しね。でも、フェイトの聞きたいことは翠屋に着けば解るかもしれない」
「え……?」
「多分、フェイトが聞きたいのはさっき俺が君を助けた時のことなんだろ?」
「あ、うん」
 やっぱり悠翔は私の考えてることに気付いていたみたい。

 実は、悠翔は意外と鋭い人なのかな……?
 でも、雰囲気的には鈍感そうに見えるかな?

 なんとなくだけど、悠翔は自分のことには鈍そうな気がする。
 だって……通りすがりの同じくらいの年齢の娘からちらちらと見られてるのに気付いて無いし。
「フェイト?」
 考えごとをしていると悠翔がいつのまにか私の顔を覗き込んでいた。
「ふぇ……!?」
 いきなり目の前で悠翔に覗き込まれた私はまたしても変な声をあげてしまう。

 うぅ〜やっぱり悠翔に会ってからはなんか変だよ……
 私ってこんなにぼ〜っとしたようなタイプだったかな……?

「きゃっ……!?」
 そう考えていたら私は何かに躓いて転びそうになってしまう。
 普段ならこんな所で転ぶなんてことは無いんだけど……。
 今の私は考えごとをしていたせいか反応出来なかった。
「フェイト……!?」
 悠翔が咄嗟に転ぶ寸前の私に手を伸ばして助けてくれたんだけど……。
















 ――――ふにっ
















 ふぇ……?
 胸に変な感触が……?

 そう感じた私は今の状況を確認する。
 私……悠翔に助けてもらってる。
 悠翔……転びそうになった私に手を伸ばして助けてくれた。

 じゃあ……この感触は……?
 何かに揉まれてるような感じ……?
 それとも……受け止められてる感じなのかな?

「ご、ごめんっ……」
 私が色々と考えていると悠翔が慌てたように私に謝る。
 それも頬を紅く染めて。
「ふぇ……?」
 悠翔が頬を紅く染めている理由が解らずに私は首を傾げる。
 そして悠翔の視線の先を見てみる。

 え……あ……悠翔の掌が私の胸に……?

「きゃぁっ!」
 私は思わず悲鳴をあげてしまう。
「す、すまないっ……」
 私の反応に悠翔も慌てる。
「や、やっぱり……倒れそうになったら、ここ、掴むよね!? そ、そうだよね!?」
 慌ててしまったためか私はとんでも無いことを言ってしまう。

 思わず、自分でこういう時に胸を掴んでしまうのは普通なんて言っちゃったけど……
 うぅ〜……恥ずかしいよ……
 でも……もっと私の胸が大きかったら悠翔も喜んでくれたのかな……?
 ……って違う!? わ、私ったら何を考えてるんだろ……
















 少しだけ気拙い空気のまま私と悠翔は翠屋へと向かっていく。

 あぅ……あんな態度をとっちゃったから悠翔の顔がまともに見れないよ……

 でも、それは悠翔も同じだったみたいで。
 悠翔も少しだけばつが悪そうにしているみたい。
 何となく大人っぽい感じの悠翔だけど……。
 こうして見ると本当に私と同じくらいの男の子に見える。

 少しだけ可愛いかも……?

 私はそんな悠翔が可笑しくって少しだけ笑ってしまう。
 悠翔も私の様子に気付いたみたいだけど、私が笑っている理由が解らないみたい。

 やっぱり……男の子が可愛いって言われるのは嫌だよね?
 私が考えていることがばれちゃったら悠翔も怒っちゃうかも
 でも……悠翔はそんなことは気にしないかな?
 そういう性格には見えないし……どうなんだろ?

 私はもう一度、悠翔の顔をちらっと見る。
 悠翔は何故か私の方を見てるみたい。
「どうしたの?」
「ん、いや……色々と考えごとをしてるフェイトがちょっと、ね」
「ゆ、悠翔っ」
 また、悠翔の言葉に頬が少しだけ熱くなる。

 まさか……ずっと見られてたなんて……
 私ってそんなに解りやすいかなぁ……?

 私は結局、悠翔の顔がまともに見れないまま翠屋へ悠翔を案内することに……。

 あぅ……ごめんね、悠翔……
















 あれから暫く歩いて私達は漸く翠屋まで到着した。
「着いたよ、悠翔」
「ありがとう、フェイト。助かったよ」
 悠翔が律儀に頭を下げながら御礼を言う。
「良いよ、気にしないで。私だって悠翔に助けてもらったんだからお互い様、だよ」
 私が悠翔の顔を覗き込みながら言うと悠翔の頬が少しだけ紅く染まって見えた。

 あれ……ドキドキしてたのは私だけじゃなかったのかな?

 そう思うと少しだけ嬉しくなる。

 やっぱり、悠翔も普通の男の子なんだ……

「じゃあ、中に行こうよ。このまま立ってるのもどうかと思うし」
「あ、ああ……解ったよ」
 悠翔の返事を確認した私は翠屋のドアを開ける。
「いらっしゃい。あら? フェイトちゃん」
 中に入ると早速、翠屋の店長である桃子さんが出迎えてくれる。
「こんにちは、桃子さん」
「こんにちは、フェイトちゃん。今日はどうしたの? 1人で来たの?」
「あ、いえ……実は……」
 桃子さんに悠翔のことを話そうと思った矢先……悠翔の姿が見当たらない。

 え……悠翔は私の傍にいるはずだよね?
 でも……悠翔がどこにいるか解らないなんて……

「む……フェイトちゃんか」
「あ、士郎さん。こんにちは」
 悠翔の姿を探していたらなのはのお父さんである士郎さんが声をかけてきた。
「フェイトちゃんは、今日は1人……。いや、もう1人いるな」
「え……?」
 士郎さんが悠翔の存在に気付いていることに私は驚く。

 どうして……私には全く悠翔が見つけられないのに……?
 確かに悠翔は私の傍にいるはずなんだけど……

 何故か私には悠翔の存在が”認識”出来ない。
 それは桃子さんも同じみたいで、士郎さんの言葉に首を傾げている。
「この感じは……一臣と同じか」



 ――――御神流、基礎乃参法「貫」



「なるほど、その若さでここまで使えるとは大したものだな」

 え……一臣って人と同じ……?
 士郎さんは何を言ってるの……?
 それに悠翔も何をしているの……?

「……やはり、貴方には通じませんか。士郎さん……いや、士郎伯父さん」
 そう言って悠翔が私の傍から姿を現す。
 いや、悠翔は私の傍にずっといたんだから……その表現は可笑しいかも。
 でも……私には悠翔と士郎さんが何をしていたのか全く解らなかった。

 い、今のは何だったの……?
 士郎さんを伯父さんと呼んだ悠翔……
 それに……私には聞き覚えの無い一臣という人のこと……
 悠翔って……いったい……?

































 From FIN  2008/3/16



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