魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「はぁ……」
 町を歩きながら私こと、フェイト・T・ハラオウンは溜息をつく。
 今は所謂、ゴールデンウィークのシーズンで現在は学業と両立していると言うことで嘱託に近い形で所属している私達の仕事はお休み。
 でも、今日はなのははユーノの所へ、はやては聖王教会の方へ行っているため海鳴にはいない。
 それに……すずかやアリサも今日は暇が取れないと言うことで、私は一人で買い物に来ていた。

 魔導師とはいえ私だって女の子……だし

 それに買い物をするのは嫌いじゃ無かった。
 それでも一人で回るというのは寂しいかな……。
「あれ……?」
 町を歩いていて私は不意に気になる人を見つける。

 年は同じくらいかな……?

 でも、なんとなくだけど……雰囲気が誰かに似ている気がした。

 う〜ん……誰に似てるのかな……?
 確かに何処かで会っているんだけど……

「きゃっ……? す、すいません……」
 その少年に気を取られすぎたのか私は誰かにぶつかってしまう。
「あぁん? いきなりぶつかっといて謝るだけで済むと思ってんのかぁ?」
 ぶつかった相手は何だか怖い人。

 でも……海鳴じゃ魔法は使えないし……どうしよう?

「ん……よく見ると案外、美人じゃねぇか」
 怖い人はそう言って私の腕を掴んできた。
「や、やめて下さいっ……!」
 普段の私なら簡単に対処出来るけど……魔法を使うわけにはいかない今の状況では何も出来ない。
 それに今はバルディッシュも管理局に預けてしまっていてここにはいない。

 だとしても……怪我をさせるわけにもいかないし……

「やめろと言われてやめるようなお人好しじゃねぇんだよ、俺は」
 振り解こうとする私をしり目に怖い人は私を何処かに連れて行こうとする。

 ど、どうしたら……っ

 ここで悲鳴を上げても良いかもしれないけど何故だか声が出ない。
 けど、今ここには助けてくれそうな人もいない。
 私は怖くなって目を瞑る。
「何を、しているんだ……!」
 私が目を瞑って男の人から目を逸らしていた時、不意に男の子の声がした。
 恐る恐る目を開けてみるとそこには私がさっき気になっていた男の子がいた。
「今すぐ、その娘を放せ」
「あぁん? なんでテメェみたいなガキに言われないといけないんだ?」
 男の子が知り合いでも無い私のために怖い男の人に注意をする。
 でも、怖い男の人は話を聞くつもりは無いみたい。
 聞く耳を持たない男の人に対して男の子の目付きが変わる。
「……言っても解らないか」
 そう言って男の子は僅かに前傾姿勢をとる。

 え……この構えって……?

 私は男の子の構えに驚く。
 そして、私が驚く間に……。
「……大丈夫か」
「え……? あ、はいっ!」
 私は何時の間にか彼の腕の中にいた。
 それも、いきなりのことだったから私の方から彼に抱きつくような形で。
 しかも……今、何が起きたのか私には全く解らなかった。
 それは、今まで私に絡んできた男の人も同じだったようで。
「な……て、テメェ……!」
 男の人は一瞬、戸惑いながらも私の方に向かってこようとする。
 でも、男の子が瞬時に間に割って入ってくれた。
「まだ、この娘に絡もうとしてるのかっ」
 男の子が鋭い目付きで怖い男の人を睨む。
「ぐ……」
 睨まれただけで動けなくなる怖い男の人。

 何が……おこってるの?

 よくは解らないけど男の子が睨んだだけで怖い男の人は動けなくなっていた。
「……さっさと行ってくれ。俺も無理矢理って言う真似はしたくないんだ」
「ちっ……」
 男の子が何をしたのかは解らないけど、怖い男の人は私達から離れて行った。
「ふぅ……」
 怖い男の人がいなくなったのを確認した男の子は深呼吸をする。
 そして、私を心配するように見つめてきた。
「……大丈夫だったかな?」
「あ、はいっ! えっと……助けてくれてありがとうございます」
「いや、気にしなくても良いよ。理不尽な暴力から”護る”のは当然だから」
 私は男の子の言葉に驚いた。
 この男の子は恭也さんと同じようなことを言っている。
 私はここで漸く、なんとなくこの男の子が気になった理由が解った。

 あ……そうか……
 この男の子は恭也さんに似てるんだ……
 ううん、なんとなくだけど雰囲気が士郎さんや美由希さん……それに、少しだけなのはにも似てる

 でも……なのは達からこの男の子の話は聞いたことが無い。

 知り合い……なのかな?

 そう考えていると男の子から声をかけられる。
「聞きたいことがあるんだけど……良いかな?」
「あ、はいっ!」
「えっと……翠屋って店を知らないかな? そこに行かないといけないんだけど……」
「あ……翠屋ですか?」
 知り合いと思っていた矢先に男の子が翠屋への道を聞いてくる。

 翠屋に用事があるなんて……やっぱり、私が思ったとおり……なのかな?

「いや、解らないなら別に良いんだ。君は……外国の人みたいだし、聞き覚えが無いかもしれないし」

 え……外国の人……?
 あ……そうか……私は一応、そうだったんだよね

「あ、いえ……翠屋だったら知っています。私もよく行くので」
 私はそう納得し、少しだけ取り繕いながら答える。
「そうか……申し訳無いんだけど、道を教えてもらえないかな? 実は、この海鳴には始めて来たから」
 本当に男の子は申し訳無さそうにしてる。
 こういうところも何となく恭也さんに似てるかもしれない。
「別に良いですよ? 私もちょうど時間に余裕がありますし、一緒に翠屋まで行きますよ」
「俺としては助かるけど……本当に良いのかい?」
「はい、それに……助けてもらった御礼も出来て無いですし」
「いや……それは気にしなくても良いよ。俺が勝手にやったことだし」
 何か謙虚に言う男の子。
 こういうところも何となく似てるような気がする。
「では、御礼とか関係無く案内しますよ。私も翠屋には行こうと思ってたので」
 このまま言いあっても男の子は応じてくれそうに無いので咄嗟に私も翠屋に行くと伝える。

 私も買い物が終わってるから帰りに翠屋に寄ろうと思ってたし……

「じゃあ……そう言うことならお願いするよ」
「はいっ!」
 男の子が了承し、こうして私達は翠屋に行くことに。

 それにしても……この男の子って誰なのかな……?
















「ああ、そう言えばまだ、名乗っていなかったね。俺は……不破悠翔。君は?」
「あ、はい。私は……フェイト=T=ハラオウンです」
 翠屋に歩いている途中で、私達はお互いに名前を言っていないことに気付き自分の名前を言う。
「……フェイトって言うのか。良い名前だね」
「ふぇっ……!?」
 私はいきなりの男の子の言葉にへんな声をあげてしまう。

 変な娘に思われなかったかな……?

「それで……君のことは何て呼べば?」
 でも、男の子は全く気にした様子もなく、私に話しかけてくる。
「あ……フェイトって呼んでください」
「解った、フェイト……だな。俺のことは……悠翔って呼んでくれたら良い」
「はい、解りました。えっと……悠翔さんって呼べば良いですか?」
「うん、それでも良い。で、少し気になったけど……多分、君は俺と同い年くらいだよね? 敬語は使わなくても良いよ?」
「え、あ……うん。解ったよ……悠翔。これで良いかな?」
 今まで敬語を使っていた私に男の子が敬語を使わなくても良いって言ってくれる。
 やっぱり、年齢は私と同じくらいみたい。
 それにしても……その割には大人っぽいかも。

 やっぱり……悠翔も色々な経験をしてるのかな?

 ふと、私はそう思う。
 さっき私を助けてくれた時の動きも何をしたのか全く解らなかったし。

 動きの感じからして恭也さんが使ってた神速と同じなのかな?
 でも……悠翔は恭也さんとの関係はあまり無さそう……

 年齢は私と同じくらいだろうから恭也さんとは随分と年齢が離れている。
 それに、あの剣術を使える人なんて殆どいないと思うし……。
 私がそんなことを考えていると悠翔が私のことをじっと見つめていた。
「えっと……どうしたの?」
「いや、大したことじゃないんだ。ただ、君は……特別な感じがする。そんな気がしただけだよ」
 悠翔が言ったことに私は驚く。
 確かに私は魔導士で、この世界では特別だと言っても可笑しくない。
 でも、魔法のことを知らないはずの悠翔が私のことを何となくでも感じたことは凄いと思う。
「でも、フェイトが何かを持っていたとしても俺は君から逃げる理由は無いな……フェイトはフェイトだし。それに、俺も……普通とは違うと言っても良いんだろうし」
「……悠翔」
 悠翔は本当に変わってるかもしれない。
 普通なら魔法とかを見たり気付いたりしたら気持ち悪がったりとか怖がったりとかもすると思う。
 それに、この世界に魔法は存在しないから。
 なのはやはやてのように高い魔力を持っている人はいるけどそれは例外と言っても良いんだし。
 でも、悠翔はそんなことも気にしていないみたいで。

 けど……悠翔も普通とは違う……?
 確かに私を助けてくれた時の悠翔は凄かったけど……
 あれ……?
 そう言えばあの時の私って……

 私はふと考えていてあることに気付く。

 わ、私……悠翔に抱きついちゃってる……?

 思いだすと頬が熱くなる。
 初対面の男の子に抱きつくなんて……普段の私からじゃ考えられない。
 絡まれたのが怖かったのは本当だけど……。
「ん、どうしたんだ?」
 頬が紅く染まっている私に気付いたのか悠翔が顔を覗き込んでくる。
「な、なんでもありませんっ……!」
 悠翔に顔を覗き込まれたのが何となく気恥ずかしくって私は顔を背けてしまう。
 そんな私が可笑しかったのか悠翔は笑っていた。

 うぅ〜恥ずかしい……

 私は俯きながら悠翔と一緒に翠屋へと向かっていく。
 でも、何となくだけど……悠翔と一緒にいるのは嫌な気持ちじゃなかった。

 どうして……かな?
































 From FIN  2008/3/13



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