「……フェイト?」
「ふぇ……?」
 考えごとをしていた私に話しかけてくる悠翔。
 私にとってはいきなりだったのもあって私は変な反応をしてしまう。
「いや、なんか考えごとをしてるみたいだったから。何か聞きたいことがあるなら遠慮しなくても良いぞ?」
「あ……うん」
 アリサ達と話していたのに悠翔は私のことを気にかけてくれた。
 なんかアリサ達とばかり話している悠翔に少しだけ、むっとしたけど悠翔は私のことも見ていたみたいで。
 私は少しだけ嬉しくなる。

 でも……どうして……私はむっとしてしまったのかな?
 悠翔は何も悪くないのに……






















魔法少女リリカルなのは
Sweet Lovers Forever
















「悠翔は……アリサ達とは護衛で知り合ったんだよね?」
 私は悠翔が質問しても良いと言っていたので聞きたいと思っていたことを尋ねる。
「ああ、そうだな。バニングス嬢……いや、アリサとはその時に知り合ったな」
 悠翔は私の質問に頷く。
「じゃあ……すずかとは?」
「すずかの方も……大体は似たようなものかな。彼女の時も護衛という形だったし」
「そっかぁ……」

 私が考えていたとおり、アリサとすずかとは護衛の時に知り合っていたみたい
 でも、私達は悠翔のことを知らなかったんだよね……
 アリサとすずかはもしかしたら、私達が管理局の方で色々とあっていた時期に知り合ってたのかも

「まぁ……彼女達と会った時も色々とあったからな……」
 何か遠い目をしながら呟く悠翔。
 遠い目をした後、悠翔は目を一瞬だけ左腕に向ける。
 けど、何事も無かったように悠翔は視線を私に戻す。
「悠翔……?」
 今の悠翔の様子が気になって私は悠翔の顔を覗き込む。
「いや、なんでもない」
 悠翔はそう言うけど……なんでもないっていう表情じゃ無い。
 悠翔は腕を怪我したって言ってたけど……。
 でも、悠翔はこれ以上は言いたくないみたいで。
「……そうなんだ」
 私は悠翔のなんでもないって言葉に納得するしかない。

 悠翔って……本当に何も教えてくれないんだね
 私は悠翔のこと、もっと知りたいのに……
 アリサとすずかが知っている護衛をしていた時の悠翔のこと……
 私には言えないことなのかな……
















「悠翔。アンタいつのまにそんなにフェイトと仲良くなったのよ」
 私と悠翔が話しているとアリサが話に入ってくる。
「いつのまにって言われても……フェイトと会ったのは今日だからな……今日の間にだよ」
「ふ〜ん……」
 そう言った悠翔にアリサは意味深な目を向ける。
「ま、良いわ。で、悠翔はどうして海鳴に来たの? もしかして、仕事?」
「いや、今回は仕事とかじゃないな。まぁ……依頼が入ったらこっちで仕事をするつもりだけど」
「悠翔が仕事以外で来るなんて珍しいわね。しかも、海鳴は初めてよね?」
「……ああ」
 アリサの質問に頷く悠翔。
 なんかアリサは悠翔のことに詳しい。
 悠翔は既に何度も護衛をしているみたいだけど……。
 アリサ達の護衛も何度かやっているのかもしれない。
「ということは……海鳴に来た理由は恭也さんや士郎さんに会いに来たっていうところかしら」
 アリサは悠翔が海鳴に来た理由をなんとなく予測する。
「……そのとおりだ」
 アリサが言ったことは悠翔が海鳴に来た理由と一致している。
 こうやって話を聞いているとやっぱりアリサは悠翔のことに詳しい。
 すずかは何も言わないけど……様子を見てみるとすずかも悠翔が海鳴に来ている理由をなんとなく解っているみたいで。
 それに対してはやては首を傾げるばかり。
 はやては悠翔とは会ったことが無いから当然なのかも。
 私は……今日、色々と悠翔や恭也さん達から話を聞いたから解るんだけど。
 けど、なのはとユーノは特に疑問を浮かべた様子は無いみたい。
 さっき悠翔とユーノは2人で話をしていたからその時に聞いていたのかもしれない。
 なのはの方は悠翔が恭也さんと士郎さんに関係する……と言ってたからそれで解っているみたい。
 けど、はやてには悠翔は何も言っていない。
 はやては何かを考え始めてるけど……。
 もしかして、悠翔が剣士なのかもしれないってことを考えているのかな?
















「なぁ、悠翔君。聞いてもええか?」
 暫く考え込んでいたはやてが口を開く。
「ああ、構わない」
 悠翔の返事を確認したはやては頷き質問をする。
「さっきのアリサちゃんとの話からすると悠翔君は護衛の仕事をしたりしとるんやな?」
「……ああ」
「んで、この海鳴に来たのは護衛の仕事やなくて……恭也さん達に会いに来たってことになるんやな?」
「……そうだな。そう考えて貰って構わないと思う」
 はやての聞いてくることが大体、あっているのか悠翔は肯定の返事をする。
「なるほどな〜」
 悠翔の返事を確認したはやてはまた、少しだけ考え込む。
 はやては今までの話と自分の聞いたことの考えを纏めているのかもしれない。
 こうやってすぐに色々と考えたり出来るはやては凄いと思う。
「アリサちゃん達の護衛をしたことがあって……それに海鳴には恭也さん達に会いにきたってことは……もしかして、悠翔君も剣士なんか?」
 少しだけ考え込んだ後、はやてはもう一度、悠翔に尋ねる。
「……一応な」
「そっか……そうなんやな〜」
 自分の考えていることが当たっていたのが嬉しいのかはやては満足そうにする。
「ってことは悠翔君もかなり強いんとちゃう? 恭也さん達と同じ剣術を遣ってるんやろ?」
「……どうだろうな。俺は剣士としては欠陥を抱えているようなものだからな。そこまで強いとは思えない」
 悠翔はまた一瞬だけ自分の左腕を見ながら答える。
「どうしたん? 悠翔君。今、自分の左腕を見とったみたいやけど……」
 悠翔は一瞬だけ自分の左腕を見ていたのをはやてに気付かれたことに少しだけ驚く。
「いや、はやてが気にするようなことじゃない。ちょっとした俺自身の問題だから」
 けど、悠翔は気を取り直し、複雑な表情で答える。
「そっか……悠翔君も色々とあるんやな」
 悠翔があまり言いたくないような表情をしていることに納得したのかはやては質問をやめる。
 今ではそうでも無いけど……はやても以前は歩けないほど足が悪かった。
 悠翔とは全く事情は違うけど、悠翔が腕に何かしらの怪我をしていたことをはやては気付いたのかもしれない。
   魔法に関することとはいえ、はやても以前は色々とあったから……それに私達も。
 悠翔が護衛をしていると聞いたことではやては悠翔には色々と事情があることを理解したんだと思う。
「せっかく、悠翔君がここまで話してくれてるんや。私達も秘密を教えなあかんかな?」
 悠翔の話を聞いて何か思うところがあったのかはやてが私となのはに提案する。
 そう……はやてが言っている秘密は私達とのこと。
 魔導師としての私達……それを話そうってはやては言っている。

 そうだよね……
 まだ、色々と秘密があるみたいだけど……
 悠翔は自分が剣士で護衛もしているってことを私達に教えてくれた
 今度は私達が自分達の秘密を伝える番
 悠翔は私が何かを持っていたとしても私が私だって言ってくれた
 それに……私がどんな存在でも……私は私だって……
 だから悠翔はきっと私達の話を聞いてくれるよね……?
 きっと……大丈夫……



































 From FIN  2008/5/13



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