えっと……皆さん、御久しぶりです。
 深見雪儚です。
 以前も御会いしたかと思いますが……改めまして。
 今回は新年のお話になっていますが、どうぞ聞いて頂けると嬉しいです。

















〜Love With New Year!〜
















「勇雅、一緒に年を越しませんか?」
「ああ、解った」
 今日のことの始まりは勇雅とのこんな会話から。
 前は父親である勇雅のお父様である勇人さんとお母様である葵さん。
 それから、勇雅の妹である唯ちゃんと私のお兄様である雪那兄様と一緒に過ごした。
 居候の昴は予定があったからいなかったのだけれど。
 だから、今度は勇雅と二人っきりで過ごしたいと思って。
 勇雅も私と同じように思っていてくれてたみたいで、すぐに頷いてくれる。
「俺も雪儚と一緒に過ごしたい。親父や母さんのこともあるが、やはり雪儚とが良い」
「ゆ、勇雅っ!?」
 ぼんっと湯気が出そうなほどに頬が熱くなる。

 もうっ……勇雅!

 でもでも、私の頬は緩みっぱなしです。
 普段はこう言ったことは口にしてくれない勇雅ですけど、私のことを大事に思ってくれているのは解ります。
 だけど、口に出してくれた時の勇雅の格好良さは反則です。
 普段は無表情でむすっ……とした感じの勇雅ですけど、こう言った時は表情を隠したりはしません。
 それでも、よく見ないと表情が解らないのはある意味で私の特権です。
 他の人には勇雅がどんな表情をしているかなんて解らないんですから。
「ごめんね、勇雅。取り乱しちゃって」
「……別に構わない」
「でも、勇雅もそう思ってくれて嬉しいです」
 ちょっとだけ取り乱しちゃったけど、勇雅の言葉に漸く返答を返す私。
 本当に勇雅も私と同じように思ってくれていて嬉しい。
 私ばっかり勇雅のことが好きだったら少し悲しいですし。
「……当然だ。雪儚は俺の大切な奴だから、な」
「勇雅……」
 そう言って私のことを軽く抱きよせる勇雅。
 私も勇雅にそのまま身体を預けます。
 頭半分くらい背の高い勇雅が私の髪を擽ります。
 そして、勇雅は私の首筋に顔を埋めて――――。
「ん……っ」
 そっと、口付けを落としました。
 勇雅が私を求めてくれてる。
 だったら、私には拒む理由なんてありません。
 私は勇雅にもっと抱き付くようにしがみつきます。
 その私の行動の意味を悟った勇雅は私をそっと抱きあげてベッドの上に優しく寝かせました。
「勇雅……優しくして下さいね?」
「ん、解っている」
 そのまま、勇雅と私は唇を重ねて――――?
















 でも、ここからは2人の時間ですので内緒です。
 一つだけ言えることとしたら……。
 最近はこう言ったことをしていなかったから勇雅も溜まっていたみたいです。
 私もそれは同じだったんですけど、ね。
















 そして、次の日……約束の日になりました。
 ちょっと、勇雅とやり過ぎちゃったせいか、身体がほんのりと熱いです。
 少しだけ昨日の余韻が残っている感じです。

 あ、勇雅……駄目です
 そこは……

 ……っていけません!?
 つい、何時ものノリでほや〜っとしてしまいました。
 今日はそんなことをしている暇はあまりないと言うのに!
 早速、起きだして私はダイニングルームの方へと向かいます。
「あ、おはようございます。雪儚さん」
「おはようございます。葵さん」
 既に起きだして皆さんの食事の準備をしているのは勇雅のお母様である葵さん。
 凄く若くて、優しくて、心もしっかりとしていると言う理想のお母様。
 でも、若いって言うのは少しだけ違うかも。
 葵さんは勇雅と唯ちゃんと言う2人のお母様なんだし……。
 結構、良い年なんじゃないかな〜っと……。
「そこは聞いちゃ駄目ですよ? これは勇人だけの秘密なんですから」
 む〜……笑顔で釘を刺されちゃいました。
 こう言ったことを考えると葵さんには毎回のように止められてしまいます。
 いや、流石に失礼だと思うから私もそこで止めるんだけど……。
「さて、と。折角、雪儚さんも来てくれたことですし、一緒に準備しちゃいましょうか?」
「あ、はいっ!」
 私が悶々と考えている間にも準備を進めていた葵さんが声をかけてくる。
 慣れた手つきで準備を進めていく葵さんはやっぱり凄い。
 私も葵さんから色々と教わって出来るようにはなったけれど……。
 やっぱり、こうはいかない。
 こうやって見ていると葵さんの凄さが改めて解る。
 私も葵さんに負けないように頑張らないと!
















 食事が終わって今度はお片付け。
 葵さんはここでもやっぱり、慣れた手つきでテキパキと。
 普段は唯ちゃんも手伝ってくれるんだけど、今回は雪那兄様に呼ばれているから参加せず。
 でも、今回に限れば少し都合が良かった。
 葵さんと一緒になって片付けた後、私は話をきりだす。
「葵さん、お願いがあるんですけど」
「なんでしょうか?」
「着付けを教えて貰えないでしょうか?」
「着付け、ですか?」
「はい」
 そう、私が葵さんにお願いしたかったことは着物の着付けの仕方。
 一応、私1人でも出来るんだけど……葵さんみたいには上手くいかない。
 やっぱり、大好きな人には少しでも綺麗に見て貰いたいから……。
 そう思ったからこそ葵さんの手を借りようと考えていた。
「それは構いませんけど……。どうしていきなり私に着付けを? 雪儚さんはそう言ったことは出来ると思っていたのですけど」
「あ、はい。実は……」
 葵さんから私が考えていたとおりの質問が投げかけられる。
 でも、少しだけそれは答えにくくって……。
「成る程、そう言うことですか。勇雅のためなんですね?」
 私の表情に気付いた葵さんが納得したような表情をする。
「……そうです」
「ふふっ……そういうことでしたら、私には拒む理由なんてありませんね。良いですよ、お手伝いします」
 私の言いたいことを理解した葵さんは嬉しそうに私の頭を撫でる。
「あ、ありがとうございます」
 ちょっとだけ、恥ずかしい気もしながらも何とか取り繕う私。
 なんと言うか葵さんにはどうしても子供扱いされてしまう。
 それだけ私のことも考えてくれているからだと思うけれど……。
 同じ女性としてちょっとだけ、葵さんには嫉妬してしまう。
 葵さんはあまりにも魅力的だから。
 でも、やっぱり葵さんに対しては尊敬の気持の方がずっと強い。
 私も葵さんみたいになれたらなぁ――――。
















 葵さんから着付けを教わって私は今、着物姿でいます。
 あれから、葵さんに色々とアドバイスを貰って……。
 ちょっとしたアドバイスも頂いて、私は気合い充分です。
 なんと言っても今の私は”着けていない”ですから!
 じゃなくて……あくまで一部ですよ? うん。
 着けないのって少し恥ずかしいけれど……これも勇雅のため? ですし。
 なんでも、葵さんが言うには作法とかの都合らしいですし――――。
 そんなやり取りがありながらも、何とか着付けを含めた準備を済ませて。
 今は、勇雅と約束した時間までもう少しです。
 そう言えば勇雅も勇雅で準備をしているみたいで。
 お父様である勇人さんと一緒に話をしていました。
「勇雅!」
「待たせたな。さぁ、行くか」
「はい……!」
 勇人さんとのお話が終わった勇雅がやってくる。
 勇雅の服装は普段着で。
 何時もよりも少しだけ決めているような気がします。
 やっぱり、勇雅って格好良いです。
 でも、勇雅って街の中とかだと凄く目立つの。
 鋭い目付きに整った顔立ち……。
 背は普通くらいだと思うけど勇雅もまだ、成長期だし。
 これから伸びてくるんだと思う。
 こう言った事情もあって勇雅は目立った存在で。
 私と同い年くらいの女の子からも凄く人気があります。
 自分の彼が格好良いと言うのは嬉しいですけど、ちょっとだけ複雑です。
 私が少しだけむすっとしているのに気付いたのか勇雅は軽く私の手を握ってくれます。
「そんな顔、するな。そんなに俺が信じられないか?」
 勇雅が私の顔を見つめる。
「ううん。そんなことないよ」
 勇雅が信じられないってことなんてない。
 だって、勇雅は私のこと大事にしてくれてるって解ってるから。
 こうやって手を握っている間にも勇雅の気持ちは私に少しずつ流れてきていて。
 勇雅も私のことが大好きだって訴えてくれてる。
 私もそれが解っているから、私も勇雅の手を握り返して――――。
 大好きって気持ちを貴方に伝えます。
 凄くどきどきするけれど、勇雅と一緒だったらこんな気持ちも嫌じゃなくて。
 やっぱり、勇雅のことだ大好きだって実感出来ます。

 うん、大好き――――
















 勇雅に連れられて、道をゆっくりと歩いていきます。
 今日は近場で縁日があると言うことで勇雅と一緒に行く約束をしていました。
 前は、皆さんと一緒でしたからこう言ったところには来れなかったんですけど。
「雪儚、はぐれるなよ」
「うん」
 私達と同じようにカップルで来ている人もたくさんいます。
 勇雅も人が多いことを理解しているのか私の手を引いてエスコートしてくれます。
 でも、流石に人が多くて……。
「きゃっ……!?」
 やっぱり、人ごみに巻き込まれちゃいました。
 別に私自身は鈍い方じゃないんですけど……今日は着物姿ですからそうもいかなくて。
 普段なら大丈夫な人ごみの中でも今日は巻き込まれてしまいます。
「雪儚っ」
 勇雅が慌てて私の手を取って引っ張り込んでくれます。
 そのまま、勇雅は人の気配のないところに私を連れて行きました。
「ゆ、勇雅……ありがとう」
「……あ、ああ」
 なんとか息を整えて私は勇雅に御礼を言う。
 だけど、私を助けてくれた勇雅の顔は紅い。
「えっと、勇雅?」
「わ、悪い……。着物を直してくれないか?」
 目を逸らしながら着物を直せと言う勇雅。
 私は少しだけ意味が分からず、自分の服装を見る。
 私の着物は人ごみによって揉みくちゃにされていて――――。
「え、あ……きゃぁぁぁっ!?」
 胸が見えるかどうかまで着物がはだけていました。
 しかも、今日の私は”着けていない”ので――――。
「勇雅……見えた?」
 実は、今の私は着物がはだけたままだとその……見えちゃうんです。
 勇雅の顔が真っ赤だと言うことを考えると勇雅に見られたのは間違い無いんですけど。
「あ、ああ。すまない」
 こう言った時には全く、取り繕わずに正直に言ってくれる勇雅。
 隠そうともしないのはやっぱり、勇雅らしい。
 それに、私も恥ずかしかったけど……勇雅だったら別に構わなくて。
 私はくすくすと笑いながら着物を整え直す。
 勇雅は私が着付けをしているのを見つめていて。
 少しだけ勇雅と目が合う。
 そうすると……また、勇雅の顔が少しだけ紅く染まる。
 普段は格好良い勇雅だけど……こう言った表情の時は可愛いです。
 勇雅は可愛いって言うとむすっとした表情になるけれど、今の勇雅を見ているとそう思わずにはいられません。

 ごめんね、勇雅――――
















 気を取り直して勇雅にエスコートして貰いながら縁日を回ります。
 歩きながらも色々と、遊んでみたり、勇雅と一緒に食事をしたりしました。
 食事は御互いに食べさせあってみたりとか。
 勇雅の食べさしをそのまま横からぱくっとくわえてみたりとか。
 普段も時々はやっているけど、こう言ったチャンスですから堂々とやってみたり。
 それから、せがんでみて勇雅に射的をやらせてみたりとかもしました。
 でも、勇雅って射的は苦手なんですよ?
 実は射的は私の方がずっと得意で。
 勇雅が射的を嫌がるのは私よりも苦手だと言うのが解っているからです。
 普段は格好良い勇雅ですけど、たまにはこう言った失敗を見るのも楽しくて。
 少しだけむすっとした表情が可愛いです。
「……何を見てるんだ」
「ううん、なんでもないの」
 勇雅がむすっとしたまま私を睨んできますけど、気にしないことにします。
 そう言った表情をしている勇雅も格好良いですから。
 ちょっとしたやり取りをしながら私達は神社の方へと向かいます。
 時間は既に除夜の鐘が終わる時間帯。
 もうすぐ、新年が明けようとしています。
 勇雅と一緒に御賽銭箱にお金を入れて手を合わせます。
 今年も勇雅と一緒で素晴らしい1年でした。
 そして、年が明けてもまた――――。
 私が御祈りを捧げている間に除夜の鐘も終わり、新年が明けます。
 それに合わせてそっと目を開くと……そこには優しそうな表情で私を見つめる勇雅がいて――――。
「明けましておめでとう。雪儚」
「はい。明けましておめでとうございます。勇雅」
 そして、新年の1番に見た光景は私の大切な人。
 勇雅がとなりにいるのは解っていたことだけど……それがとても嬉しくて。
 私はそのまま惹かれるように勇雅の前で目を閉じて――――。
 勇雅も行為に気付いてそっと私の顔を勇雅の顔に向けさせて――――ゆっくりと口付けます。
 新年が明けて初めてのキス。
 それは凄く甘くて、とろけてしまいそうで……。
 とても、優しいものでした――――。
















 勇雅、大好きです――――
 こんな私ですけど、今年もよろしくね――――













 From FIN  2009/1/1



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