みなさん、こんにちは。
 えっと……私の名前は『深見雪儚』です。
 このお話は私達のクリスマスのお話です。
 面白くないかもしれませんが……どうぞ、よろしく御願いします。

















〜X'mas Lovers〜
















 私は勇雅の部屋の前に居る。
「雪儚か? 入って良いぞ」
 部屋の方から声が聞こえる。
 声の主は『霞勇雅』。私の一番好きな人。
 私は、勇雅の部屋の扉を開ける。
 勇雅が私を迎えてくれる。
「どうした、何か俺に用でもあるのか?」
「うん。えっと……その……私とデートしてくれませんか?」
 私は勇雅に敬語で尋ねてしまう。

 普通に伝えようと思ったのに……

 うぅ〜……まだ敬語で喋る癖が抜けてない……

「ああ、構わないぞ? 最近は忙しかったからな……今、やっている分が終われば、仕事の方も暫くは手伝わなくて良いしな」
 勇雅はまったく気にせずに応えてくれる。
「本当に良いの? 勇人さんの御手伝いをしなくても」
「大丈夫だ。親父と母さんにも今の仕事が終わったら暫くは仕事を手伝わなくても良いと言われてるからな」
 勇雅は私の頭を撫でながら言う。

 ………えへへ……くすぐったいよ……勇雅

「……何とかクリスマスには間に合ったな」
「ふぇ?」
 突然の言葉に私は首を傾げる。
 そう言えば、今は12月……

 確かに、もうすぐクリスマス……

「……クリスマスはどうしても雪儚と過ごしたかったんだ」
「えっ……?」
 私は勇雅を見つめる。
「まぁ……その……なんだ……俺達にとっても大事な日だしな」
「勇雅……」
 勇雅の言いたい事は解る。
 私達が初めて出逢ったその日がクリスマスだったから。










――――クリスマス










――――私と勇雅の出逢った日










――――思えば私はあの頃から……










――――貴方に……勇雅に恋しています。










 私はそっと目を瞑る。
 勇雅も私に応える様にそっと顔を近付けてくる。
 そして、勇雅は私にそっと唇を重ねてくれた。
 優しくて暖かい勇雅のキス……。
 私は、それだけでとろけてしまいそうな気持ちになってしまう。
 勇雅がそっと唇を離す。
 私はとろんとした目で勇雅を見つめる。
「続きはまたな」
 私は勇雅が、まだ仕事中だと言う事を思い出す。
 それでも私に応えてくれた勇雅は優しい。

 でも、私は勇雅を困らせたりしたくないから……

「……はい」
 勇雅の言葉に素直に応える。

 ほんの少しだけ名残り惜しいけど……

 私は勇雅に見送られながら部屋を後にする。
 最後に時間と待ち合わせの場所の約束をして。

 勇雅と一緒に過ごせるなんて……クリスマスが楽しみ……

















〜〜〜勇雅SIDE〜〜〜
















 雪儚を送り出した俺は再び端末に向かい、書類を作成していく。
 他の人間が言うには俺の文字を打つ速度は異常だと言うが、俺はそうは思わない。
 親父の方が俺なんかよりも速いからな。それでいて、ミスも無い。
 確かに俺もミス無く書類を作成できるが、親父程速くはできない。
 ……実は書類を纏めるのは雪儚の方が得意だったりするからな。
 だが、雪儚に仕事を推し付けたくは無い。

 ……苦労はさせたく無いしな

 そんな事を考えつつ、俺は黙々と書類の作成を続ける。
 暫く時間が経ち、俺が書き上がった書類をデータに保存した所で、メールが入る。
「……誰からだ?」
 俺はメールを確認する。
 相手は『深見雪那』。雪儚の双子の兄で、俺の親友でもある。





 勇雅。悪いが、相談に乗ってくれないか?





 珍しいな……雪那がこんなメールを寄越して来るとはな。

 俺は了解の返事を雪那に送る。すぐさま返事が返ってくる。





 すまない。今からお前の部屋に向かう




 俺は再度、了解のメールを送信した後、仕事の道具を一通り片付けた。
 雪儚との予定を考えながら雪那を待つ。
 少しして、コールが掛かる。
「雪那だな? 入って良いぞ」
「……ああ」
 雪那が部屋に入ってくる。
 俺は雪那を適当な場所に座らせる。
「それで、何を相談しにきた?」
 少しの間の後、俺は雪那に問い掛ける。
「いや……ちょっとな……」
 雪那は歯切れ悪く応える。

 仕方が無いな……ちょっと安直だが、聞いてみるか

「……もしかして、”唯”の事か?」
 ”唯”とは俺の妹で、俺とは正反対の明るい性格をしている少女だ。
「………」
 雪那は無言で俯く。
「成る程な……。だが、俺も唯が何を考えているかは解らないぞ」
「……そうだな」
 雪那が呟く。そんな雪那に俺は話しを続ける。
「まぁ……唯は雪那の誘いなら何でも応じるとは思うが」 
「……そうか?」
「ああ、雪那は自分を過小評価しすぎている」
「………」
 雪那は暫く無言で考える。
 俺は黙って雪那を見つめる。
「……俺が馬鹿だった様だ。唯の所に行ってくる」
 漸く雪那が口を開く。
「そうしろ、雪那。俺は唯を雪那以外に任せるつもりは無いからな」
「……すまない」
 一言だけ言い残し、雪那は俺の部屋を出て行く。

 さて、俺も親父に書類を渡しに行くか

















〜〜〜雪儚SIDE〜〜〜
















 勇雅の部屋を後にした私は唯ちゃんの部屋に来ている。
「ねぇ、雪儚ちゃん。お兄ちゃんの部屋に行ってたんでしょ?」
 唯ちゃんが興味津々な顔で聞いてくる。
「うんっ」
 私は笑顔で唯ちゃんに応える。
「それで? お兄ちゃんは何て言ったの?」
「えっ……? 勇雅は……えっと……その……」
 私はしどろもどろに応えようとする。
「そっかぁ……良いなぁ……」
 唯ちゃんは反応だけで私が何を言いたいのか解ったらしく呟くように言う。

 あうぅ……私ってそんなに解り易いかな……

「私も雪那くんの所に言って来ようかなぁ……」
「雪那兄さまのところに?」
 私は唯ちゃんに質問する。
「うん……やっぱり雪那くんと一緒に過ごしたいし……」
 唯ちゃんは頬を紅く染めながら言う。
 私も唯ちゃんの気持ちはよく解る。
「私もその気持ちは解るかな……私も勇雅と一緒にいたいから声をかけたんだし……」
「やっぱり、雪儚ちゃんもそうなんだ……」 
「うん。クリスマスって大事な日だと思うし……それに……私にとっては……その……」

 勇雅に出会えた日だし……

「そっかぁ……」
 唯ちゃんが一言呟く。
「うん! 私も雪那くんに話してみるよ」
 少し、考え込んだ後、唯ちゃんが言う。
「本当? きっと雪那兄さまも喜んでくれるよ」 
 私が唯ちゃんの言葉に応えた時、部屋のコールが鳴る。
「は〜い」
 唯ちゃんが部屋にきた人に応える。
 その人は私の良く見知った相手。
「せ、雪那くん……」
 唯ちゃんが雪那兄さまを迎える。

 私は邪魔になりそうかな……

「唯ちゃん。私はそろそろ部屋に戻るね」
 私は唯ちゃんに声をかける。
「え?」
 唯ちゃんが驚いた様な声で応える。
「すまない。雪儚」 
 雪那兄さまが私に謝る。
「良いんですよ。 唯ちゃんも頑張ってね」
「え……う、うん……」
 私は唯ちゃんにも声をかけてから部屋を後にする。

 二人ともうまくいくと良いな……

















〜〜〜勇雅SIDE〜〜〜
















 俺は親父に書類を届けるためにリビングの方に向かう。

 多分、親父は母さんと一緒に居るだろうからな

 俺はリビングに入る。
 案の定、親父と母さんはリビングに居た。
 しかも、親父の脚の上に座っている。
「どうしたんですか? 勇雅」
 俺に気付いた女性が声をかけてくる。
 声をかけてきた女性は、俺の母親『霞葵』。
 かなり天然の入った女性で、外見はとても若作りだ。
 正直、俺くらいの子供が居る様には見えない。……親父の方も結構、若作りだがな。
「書類が完成したから渡しに来た」
 俺はテーブルにディスクを置く。
「そうですか……お疲れ様です、勇雅」
「すまんな、勇雅」
 親父と母さんが俺に労いの声をかけてくれる。
 母さんと一緒に声をかけてきたのは俺の父親である『霞勇人』。
 俺が全くと言ってもいい程、届かない相手だ。
「……気にしないで良い」 
「そうですか……。でも、無理な時は言ってくださいね」
「ああ、解ってるよ」
 母さんは優しい。甘過ぎるほどに。
 俺も自分の力量は弁えている。親父に遠く及ばない事も俺自身が一番、理解していると思う。
 俺は親父と母さんに声をかけ、隣りのキッチンへ向かう。
 キッチンでは一人の青年がテーブルで紅茶を飲んでいた。
 青年の名前は『天崎昴』。
 数年前に”ある事情”で親父に助けられている。
 現在は、俺の家に迎えられ俺達の家族となっている。
「御疲れ、勇雅。仕事は終わったのか?」
 昴が俺に声をかけてくる。
「……ああ。今、書類を渡してきた」
「流石に速いな」
「そうか?」
 昴はそう言うが、俺に実感は無い。
 実際、昴も仕事は速い。寧ろ、書類の作成とかは昴の方がずっと速くて綺麗に纏まっている。
「勇雅は書類作成とかは他の仕事に比べればあまり得意じゃ無いだろう? そう考えればかなり速いさ」
 昴が俺に紅茶を渡す。
「……昴がそう言うならそうかもな」
 俺は紅茶を一口飲み一言、呟く。
 昴と暫く雑談をした後、俺は部屋を後にする。

 さて、予定を考えておかないとな……

















〜〜〜雪儚SIDE〜〜〜
















 唯ちゃんの部屋を後にした私は、バスルームに向かう。
 シャワーを浴びながら勇雅と過ごすクリスマスに想いを馳せる。

 勇雅はどうしてるのかな……

 少しそんな事を考えながら、ゆっくりとお風呂で暖まる。
 暫く、お風呂で暖まった後、私はバスルームを後にする。
 部屋に戻った私は端末にメールがきていた事に気付く。
 相手は唯ちゃんからだった。





 雪那くんが誘ってくれたよ。  雪儚ちゃんもお兄ちゃんをよろしくね。




「もう……唯ちゃんったら……」
 ぽっ……と頬が熱くなる。
「でも……ありがとう。勇雅を私に任せてくれて」
 私は唯ちゃんに返信のメールを送る。

 ふぁ……もう……寝ようかな……

 でも……今日は勇雅の部屋で一緒に寝ようかな……?

 う〜ん……勇雅は仕事で疲れてるだろうし……

 やっぱり……勇雅も寝てるかな……?

 そんな事を考えていると眠気が襲ってきた。

 夢でも貴方に会えるかな……?

 おやすみなさい……勇雅

















〜〜〜クリスマス(聖夜)〜〜〜
















 勇人さん達とパーティをしている途中で私はそっと会場を抜け出す。

 勇雅との約束があるから……。

 私は勇雅との待ち合わせ場所に向かう。

 同じ所に住んでいるんだから、待ち合わせなんて意味が無いって言われそうだけど……

 でも……その方がデートらしいですよね?

「ふぅ……」
 私は待ち合わせ場所で勇雅を待つ。

 勇雅はまだ来ていないみたい……

 そんな事を考えていると急に知らない人から声をかけられる。
「ねぇ君、一人?」
「え…?」
 急にかけられた声に私は振り返る。
 振り返った先には私よりも年上っぽい男の人が二人。
「一人だったらさ、俺達と一緒に行こうよ」

 あ……ど、どうしよう……

 勇雅がいないときに……

「ご、ごめんなさい。私、一人じゃありませんから……」
 私は断ろうとする。
「君みたいな子を一人にさせるような奴ほっといて俺達と行こうよ」
「こ、困りますっ……」
 私は男の人の手を振り払おうとするけど……。
 もう一人の男の人が私の腕を掴んで離そうとしてくれない。
 無理に逃げようとしてもぜんぜん腕が離れない。
 そして私はバランスを崩してしてこけそうになってしまう。
「きゃっ!?」
「ほら、一緒に行こうぜ」
 私は強引に連れていかれそうになる。





 ――――勇雅……っ!





 私に伸ばされようとした手が目前で止められる。





 ――――え……?





「な、何すんだてめぇ!!」
   男の人が後ろを振り向いて叫ぶ。
 男の人が振り向いた先には……私の一番大好きな人。





 ――――ゆ、勇雅……





 私を護ってくれたのは勇雅だった……。
 ほんの少しだけ肩で息をしているので急いで来てくれたみたい。
「俺の女に触れるな」
 とても威圧感のある勇雅の声……。
 男の人たちはそれで後ずさりする。
「雪儚に近づくな」
 勇雅はその眼光だけで男の人達を制してしまう。
「…ちっ! くだらねぇ!」
 そして男の人達はどこかへ去って行く。
 私は勇雅が来てくれた事に安心して身体中の力が抜けてしまう。





 ――――俺の女……





 ――――勇雅のとてもかっこいい台詞に私は心奪われてしまいます……





「雪儚、大丈夫か?」
「……あ……は、はい。ありがとうございます」
 本当に怖かったので……勇雅が来てくれて本当に嬉しかった。
「悪いな。これからはちゃんと護るから」
「………はい。お願いします」
 そう言った勇雅はとても頼もしくて……
 本当にかっこよかったです。

 あ……また敬語になっちゃった……。

















 勇雅と手を繋いで街を歩いて行く。
 今日は雪が降りそうなほど気温が低い。
「どうしたんだ? 寒いのか?」
 勇雅が少しだけ寒がっている私を気遣ってくれる。
「はい……少し……寒いかな……」
「じゃあ、ちょっと待ってくれ」
 勇雅が自分のコートを私に羽織らせてくれる。
「え……あの」
「ん?」
「良いの?」
「ああ……別にかまわない」
 勇雅は少しだけ私に微笑んで……。
「雪儚が凍えるよりはいいからな」
「えっ? あ……ありがとうございますっ///」
 私はたちまち顔を紅く染めて伏せてしまう。
「とにかく、行こうか」
 勇雅が何事もなかったように声をかけてくるのが悔しくて……。
「はいっ」
 私は悪戯返しに勇雅の腕にしがみつく。
 勇雅は恥ずかしいと言っていたけれど。
















 勇雅の腕にしがみついたまま街を歩いていく。
 本当は恥ずかしいはずなのに勇雅は私の腕を振り払おうとはしない。
 そんな勇雅の横顔がかっこよく見えてしまい、私はつい…どきっ…と胸が高鳴ったりしてしまう。
「どうしたんだ?」
 私が顔を紅くしていた事に気付いた勇雅が声をかけてくる。
「ううん、何でもないの」
「……そうか」
 また、何事もなかったように勇雅は私と腕を組んだまま歩いて行く。
「雪儚、ちょっと俺について来てくれないか」
 どのくらいたったかは分からないけれど不意に勇雅が私に声をかけてくる。
「え……? あ、はいっ」
 私は勇雅に言われるままについて行く。
















 暫く勇雅に連れられて着いた場所は……
 大きなイルミネーションを施された大きな木。
「綺麗……」 
 私はぽつんと呟く。
「これを雪儚に見せたかった。……雪儚が喜んでくれると思ったから」
「え……?」
 勇雅の言葉に私は驚く。
 そして少しの間の後……。
「……後、雪儚に渡したい物がある」
 勇雅はそう言って小さな箱を取り出す。
「それ……いったい何ですか?」
 私は興味津々で質問する。
「ちょっとな……」
 勇雅は、少しだけはにかんだように笑う。
「雪儚」
「なぁに?」
「ちょっと目を瞑っててくれないか」
「はい…」
 私は勇雅に言われた通りに目を瞑ってされるがままにされる。
 しばらくしてから……。
「良いぞ、雪儚。目を開けてみてくれ」
 勇雅の声を合図にして私はそっと瞼を開く。
 私の首には……とても綺麗なペンダントが輝いている。
「勇雅……これは……?」
 勇雅は私の髪にそっと触れながら言う。
「……御守りだ。雪儚を護ってくれる様にな」
 勇雅……嬉しい……。
「……迷惑だったか?」
 俯いた私に勇雅が不安そうに声をかける。
「い、いえ……そんなことないですっ///」
 私は慌ててお礼を言う。

 ちょっと……嬉しくて言い忘れちゃいました……

「そうか……よかった」
 そんな私に勇雅は満足そうに言う。
 そして勇雅は空を見上げる。
「雪だな…」
「え…?」
 私も勇雅につられて空を見上げる。
 見上げた空からは雪がしんしんと降り注いでいた。
「凄いですよ! 勇雅!」
「……雪儚は初めて見るのか?」
「いいえ、そういうわけではありませんけど……」
「………?」
「あまりこうして雪と触れ合うことは少なかったの……」
「……そうか。なら……尚更、雪儚を連れてきて良かった」
 勇雅が私の手をにぎる。
「はいっ……!」
 あ……私も勇雅にプレゼントがあるんだっけ……。
 不意に私は勇雅にペンダントのお礼をしていなかった事を思い出す。
「………?」
 勇雅は訳が解らず私をじっと見つめる。
 私は勇雅に小さな箱を渡す。
「雪儚?」
「えっと……私からもプレゼントです……」
「雪儚……開けて見ても良いか?」
「はい……」
 勇雅がゆっくりと箱を開ける。
「……これは?」
 箱の中身は一つのペンダント。
 勇雅のくれた物とは違うデザインの物。
「えっと……御守りです。勇雅はよく無理をするから……」
「……雪儚。ありがとな……」
 勇雅が頬を紅く染めながら言う。
 そんな勇雅に私は微笑んで『彼』の首にそっと手をまわす。
 勇雅もどうすれば良いのか解ったらしく私をそっと抱き寄せる。
 そして二人で少しの間だけ見詰め合って……。
 私は勇雅にそっと唇を重ねた…。
 いつまでも勇雅と一緒にいられますように…。
 ささやかな願いを込めて…。
















 そんな私達を祝福するように雪はいつまでも降り続いていました……。
 その手に贈り物を持って……。













 From FIN  2006/12/25



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